大判例

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大阪高等裁判所 昭和25年(う)2704号 判決

弁護人は原審裁判所は検察官の起訴状朗読後被告人並びに弁護人の起訴状の認否を行い、次いで冐頭陳述や証拠調を経ないで、詳細に被告人を尋問し自白を求めたが右は公判審理の手続が法令に違反する場合にあたると主張する。そこで記録を調査するとなるほど原審裁判所は原審公判において検察官の起訴状朗読後被告人に対しいわゆる黙秘権を告げた上被告人及び弁護人に対し被告事件について陳述する機会を与え、これに次いで比較的詳細に被告人を尋問していること弁護人の言う通りである。しかし更に詳しくその尋問の内容に立入り原審裁判所が何故にかような尋問をするに到つたかについて調査するに、被告人はまず検察官の起訴状朗読後その公訴事実の一部を否認しその一部を自認する旨陳述したので原審裁判所は本件公訴事実中否認する部分と自認する部分を明確にするため被告人が何故にその一部を否認しその一部を自認するかを尋問しているのである。

而して原審裁判所の尋問内容は以上につきるのである。刑事訴訟法は被告人に訴訟当事者としての地位を確保し同法第三百十一条第一項において被告人は供述義務がなく終始沈黙し又は個々の質問に対し供述を拒むことができることを規定し、裁判長は検察官の起訴状の朗読が終つた後同法第二百九十一条第二項のいわゆる黙祕権を告げた上被告事件について陳述する機会を与えなければならないことを規定している。しかしその後の公判手続においては裁判長は事件の性質証拠調の状況にてらし随時刑事訴訟法第三百十一条第二項により必要な事項につき被告人の供述を求めることができるのである。そして如何なる事項につき如何なる時期に如何なる程度に質問を為すべきかは専ら裁判長が自由に決し得るところである。もとより被告人の訴訟当事者たるの地位にかんがみ証拠調に先だち予断をもつて被告人の自白を求めるごとき疑ある程度の尋問は厳に戒心しなければならない。さりとてこれがために裁判長は証拠調に先だち被告人に対し全然尋問ができないというわけにいかない検察官の公訴事実について争ある場合にはむしろ証拠調に先だち適宜裁判長において被告人の供述を求め争点を整理することはその後の公判手続を都合よく進行せしめ訴訟当事者をして立証又は反証を容易ならしめもつて適正迅速な裁判を得るゆえんなのである。本件についても被告人は公訴事実を一部否認したので原審裁判所は争点を整理するために所論の尋問をなしたことが明らかであり、且つ原判決は被告人の否認した部分について有罪の判決をしていないのであるから原審裁判所が予断をもつて尋問したという非難も当らない。所論は独自の見解にすぎない。

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