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大阪高等裁判所 昭和25年(う)85号 判決 1950年4月07日

被告人

西村茂

主文

本件控訴はいずれもこれを棄却する。

理由

被告人大原伴、西村茂両名の弁護人田畑政男、同田上義智の控訴趣意各第一点について。

昭和二十一年勅令第三百十一号は昭和二十年勅令第五百四十二号に基いて連合国最高司令官の為す要求に係る事項を実施する為に制定公布せられたもので、その第一條は日本の裁判権行使を制限する例外規定であるからこれを解釈するに当つては、例外規定解釈の通則に従い厳密にその法意を検討することを必要とする。而して同勅令の基本指令は連合国最高司令官から一九四六年二月十九日発せられた刑事裁判権の行使に関する件なる覚書であつて右勅令第一條に規定する内容は同覚書の第一項、第二項を以て指示要求せられたものに外ならず覚書の第一項の趣旨は勅令第一條第一号に覚書第二項のA乃至Gの趣旨は勅令第一條第二号乃至第八号にそれぞれこれを受けているものと解せられるところ覚書第二項Gには同項A乃至Bの各犯罪に就て共謀し、又は教唆幇助する行為と解せられる文言になつておりその趣旨を受けて勅令第一條第八号が定められたとすれば、同号の規定はその用語妥当を欠く嫌いはあるが、同條第二号乃至第七号の行為について共謀し、又は教唆し、若しくは幇助する行為の趣旨に解すべきであつて第一号の連合国人の犯した罪との共犯関係事件の如きは覚書による要求事項の範囲外に属し、右勅令を以て定めた例外の場合には該当しないから、日本人なる以上日本の裁判権に服するの原則によるべきは言を俟たないところといわねばならない。従つて本件が中国人呉百福等と共謀しての犯行であるとしても被告人等に対する本件公訴の提起並びにその受理が不法であるとの論旨は理由がない。

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