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大阪高等裁判所 昭和25年(ネ)164号 判決 1953年4月24日

控訴人 被告 竹村喜太郎

訴訟代理人 清水嘉市

被控訴人 原告 平尾陽一

訴訟代理人 遠田義太郎

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は原判決を取消す被控訴人の請求を棄却する訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする旨の判決を求め被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

被控訴代理人の陳述した事実は控訴人の抗弁事実を否認すると述べた外原判決摘示と同一であるからこれを引用する。

控訴代理人は答弁として控訴人が被控訴人主張の如き約束手形一通を振出したことは認めるが右手形によつて控訴人は手形の受取人林谷憲次から金九万円を受取つたもので従つて同人に金九万円を返済すればよい約束であつたところ、その後控訴人から右訴外人に対し代金九万円相当の繊維品を売渡し右代金と本件手形債務とを差引いて手形を控訴人に返還することとなつたが同人が急死したためそのままになつていたもので、被控訴人は右の事実を知りながら本件手形を取得した悪意の取得者であるから控訴人には支払義務がないと述べた。

証拠として被控訴人は第甲一号証を提出し控訴代理人は控訴人本人訊問の結果を援用し甲第一号証の成立を認めて利益に援用した。

理由

控訴人が控外林谷憲次を受取人と定めて被控訴人主張のような本件約束手形を振出したことは当事者間に争のない甲第一号証によると右手形は受取人林谷憲次から林谷登代を経て被控訴人に順次裏書譲渡せられたことは認められる。控訴人は本件手形債務は既に消滅し林谷憲次から返還せらるべきもので被控訴人がこれを知りながら取得したものであると抗争するが控訴人本人の供述によつても右事実を認定するに足らないし其の他控訴人援用の証拠によつてはこれを認めることができないから右抗弁を採用するに由がない。而して前記甲第一号証によると本件手形は昭和二十四年十一月十五日支払場所に支払の為め呈示せられたことは明らかで呈示期間経過後の呈示ではあるが約束手形の振出人に対しては遅滞に附する効果を生じるものであるから控訴人は手形所持人たる被控訴人に対し手形金十万円及之に対する昭和二十四年十一月十六日から完済まで年六分の割合による損害金を支払わねばならない。

よつて被控訴人の本訴請求を正当としこれを認容した原判決は相当で本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三八四条第八九条第九五条を適用して主文の通り判決する。

(裁判長判事 吉村正道 判事 大田外一 判事 金田宇佐夫)

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