大阪高等裁判所 昭和25年(ラ)83号 決定
選定当事者
抗告人 西堀定一
相手方 中川善之祐
一、主 文
原決定中「申請人のその余の申請はこれを却下する」とある部分を取り消す。
相手方(被申請人)が昭和二十五年四月十八日に変更した中川煉瓦製造所就業規則中出來高給についての第三九條の規定はその効力を生じないことを仮に定める。
相手方(被申請人)は右製造所の出來高給につき変更前の就業規則の規定によらねばならない。
申請費用並びに抗告費用は相手方(被申請人)の負担とする。
二、理 由
本件抗告理由は末尾に添えた仮処分決定に対する抗告申立書と題する書面に記載したとおりであつて、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
抗告人西堀定一及び西堀文雄、木村壽夫、保海幾和、徳永かつが昭和二十四年四月以前から相手方中川善之祐の経営に係る中川煉瓦製造所に雇われ煉瓦の製造に從事していること、相手方が昭和二十四年七月二十六日抗告人等との間に締結せられた既存の労働契約と同一内容の給與その他の事項を定めた就業規則を作成してこれが届出を爲した上これを実施してきたこと及び相手方が昭和二十五年四月十八日右就業規則中出來高給についての第三九條所定の基準額を全作業につき一せいに低下せしめるように規定を変更して、これが届出を爲した上これを実施しようとしたこと(右就業規則第三九條の出來高給に関する変更前及び変更後の規定は原決定に添えた別表第一、第二に記載したとおりであるからここにこれを引用する)は当事者間に爭がなく、抗告人等が期間の定めなく雇傭されたものであつて、右雇傭関係が昭和二十五年四月一日以後も引続き存続するものと認むべきことは原決定の理由に示されたとおりであるから、ここにこれを引用する。
そうだとすると、労働基準法第九三條は就業規則で定める賃金よりも不利な賃金を労働契約で定めることを禁止すると同時に、既存の労働契約で定める賃金よりも不利な賃金を就業規則で定めることをも禁止しているものと解するを相当とすべきが故に、相手方のなした出來高給に関する就業規則の変更は抗告人等に対しその効力がないものといわなければならない。なお原決定中には賃金は毎年四月初に労使双方で協議決定せらるべき約旨の下に労働契約がなされたものと認むべきであるから、賃金の点については既存の労働契約なるものは存在しないこととなると認定しているけれども、抗告人等は変更前の就業規則によつて定められたと同一の賃金によつて雇傭せられ、冒頭認定の如く右雇傭契約が昭和二十五年四月一日以後も存続するものと認定しうる以上、賃金に関する労働條件が労使双方の協議で有効に変更せられるまでは、從前の條件によるべきものと認むるを相当とすべきが故に、原決定中抗告人の申請を却下した部分は失当であつて、抗告人のこの点に関する仮処分申請もその理由があるものと認められるので、民訴第四一四條、第三八六條、第八九條、第九六條に從い主文のとおり決定する。
(裁判官 大嶋京一郎 林平八郎 大田外一)