大阪高等裁判所 昭和26年(う)1363号 判決
弁護人は、原判決は被告人が本件動産を買受けながら所定の帳簿にこれを記載しなかつた事実を認定し、古物営業法第十七条違反に該当するものとして処断しているけれども、本件は机上の売買であつて現実に物の引渡がなかつたのであるから同条の適用がない。原判決には事実の誤認があると主張する。
よつて原判決を調査するに、原判決は所論の通り被告人が東成税務署より自転車等百四十九点を買受けながら所定の帳簿にその旨記載しなかつたものであると判示して、これを古物営業法第十七条違反に該当するものと認め同法第二十九条を適用処断しているのである。
しかしながら、同法第十七条によれば古物商は、帳簿を備え、売買のため又は売却の委託により、古物を受け取つたときは、その都度、その帳簿に同条所定の事項を記載しなければならないと規定しているのであつて、単に買受けただけでは同条所定の帳簿記載義務は生じないものといわなければならない。原判決挙示の検察事務官に対する被告人の第一回供述調書によれば「本件は机上入札により私の所有となつたものでありますが、それは書類上のみで物件は被差押者の自宅に在り、私としましてはそれを引取るのが目的ではなく夫等物件をその儘差押者に買戻して貰うのが目的で、その間に一割乃至二割の利益を加算して買戻しをして貰いました。」と供述しており、原審公判でも被告人は現品を見たことがないと述べているのである。しかして、原判決挙示その他の証拠を綜合してみても、被告人が本件物件を買受けた後如何なる方法で、これを受け取つたか、その事実関係が明らかではない。記録を精査すると原審裁判所はむしろこの点について少しも審理をしていないことが窺われるのである。従つて原判決には事実誤認の疑が充分であるから破棄を免れない。