大判例

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大阪高等裁判所 昭和26年(う)1380号 判決

論旨は要するに原審は主たる訴因について審理を尽さないで予備的訴因について審究判断した違法があると主張するのである。およそ裁判所が検察官の予備的訴因の追加請求を許した場合であつても、まず本来の訴因について審理を尽してその証明がない場合に初めて予備的訴因について審理判断を為すべきであつて、たとい予備的訴因が認められる場合であつても、本来の訴因についての審理を尽さないまゝ予備的訴因について判断を下すことは訴訟法の法意に反し、審理不尽の結果事実誤認の疑が存することとなるのである。ところで記録によると本件において本来の訴因は暴利販売の事実(罰条物価統制令第十条)で予備的訴因は不当高価販売の事実(罰条同令第九条の二)であるが、原判決は論旨摘示のように説明し「被告人が販売した屋根板の仕入値段は一梱につき百九十五円であるから、この仕入値段に比べると被告人の販売値一梱四百円はたとえ暴利を目的としなくとも社会通念上の経済原則に照し不当に高価な額である」と断じ、これに対し物価統制令第九条の二を適用しているところから見れば、原審は不当高価販売の罪と暴利販売の罪との区別を明確にせず、両者の構成要件を正しく理解していないものと考えられる。何となれば、前者における不当に高価な額とは一般社会通念に照らし、不当と認められる程度に高価な額を云い、利潤と離れた観念であるから、仕入値段と比較して認定すべきものではなく、価格等が不当に高価であるかどうかは、その取引当時若しくはその前後における同種又は類似の物資に対する統制額又は公正な普通一般の取引界における市場価格等を参酌した社会経済維持の適正価格を標準として決定すべきであるからである。之に反し、後者すなわち、暴利販売の罪における暴利とは利潤の問題であつて、取引当時における一般社会通念に照らし相当な利潤と目せられる範囲を逸脱し著しく不当な利潤を得ることであるから、暴利であるかどうかは、当該取引におけるその商品の生産原価又は仕入価格の外に資本利子及び営業費等を明らかにしてその取引における具体的利潤の算定を正額ならしめ、尚同種の業者が同種の商品を販売する場合における正常の利益すなわち同種の取引一般の客観的適正標準利潤を明確ならしめた上これらを参酌して当該取引における利益が暴利とみなされる程度のものか否かを判断しなければならないのである。ところが記録を精査しても、原審は之等具体的利潤及び客観的適正標準利潤を算定すべき基礎事実について究明した跡が認められないのである。すなわち原審がこの点について審理を尽さないで予備的訴因について審判したのは訴訟法の法意に戻り判決に影響を及ぼすべき事実誤認の疑い濃厚であるから原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。

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