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大阪高等裁判所 昭和26年(ナ)24号 判決

原告 西屋保夫

被告 大阪府選挙管理委員会

被告補助参加人 鶯地一隆

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告は当選者鶯地一隆の布施市会議員当選の効力に関し原告の異議申立について布施市選挙管理委員会が昭和二十六年五月三十一日附なした決定に対する原告の訴願について被告が昭和二十六年八月二十三日附なした裁決を取消す、昭和二十六年四月二十三日に施行せられた布施市会議員選挙における当選者鶯地一隆の当選を無効とするとの判決を求め、その請求の原因として、当選者鶯地一隆は昭和二十六年四月二十三日施行せられた布施市会議員選挙に際し、同年四月三日立候補の届出をし、その当選者と決定した。同人は従来、大阪府八尾伝染病院組合(以下、組合と略称す)会議議長として地方公務員の職にあつたので、同年四月一日組合会議員の辞職願を組合助役山本佐支男宛に提出した。ところが組合規約十三条には「………本規約に規定なきものは地方自治法を準用する」と規定し、組合規約には組合議員の辞職に関し何等の規定がないので組合会議員の辞職については当然地方自治法を準用せねばならない。同法一二六条によれば「………議員は議会の許可を得て辞職することができる。但し閉会中においては議長の許可を得て辞職することができる」旨、更に同法一〇八条には「………議長及び副議長は議会の許可を得て辞職することができる」旨規定しているから、この規定を組合議員の辞職に準用すれば組合会議長は組合会議の許可を得て辞職することができることとなるので、組合会議議長の辞職願は当然同組合会議宛に提出されるべきである。然るに敍上ように鶯地は全く許可権限のない組合助役山本佐支男宛辞職願を提出したのであつて、適法な辞職の申出ということができないから辞職の申出の効力が生ずる余地なく、当選者鶯地一隆は依然組合会議員たるの身分を有しているものと解すべきで、公職選挙法八十九条によつて公職候補者となることができない。仮に右辞職願が適法になされた辞職の申出であるとしても、右申出を許可すべき組合会議の意思決定をした事実がないので同法九十条により同人が辞職の申出をした同年四月一日以後五日に該当する同年四月五日に組合会議長を辞職したものとみなされる、ところが同人の立候補届出は同年四月三日であるから届出当時は依然組合会議長の身分を有していたことになり、同人は前同様公職の候補者となることができない。以上の理由により当選者鶯地の立候補は公務員の立候補制限に違反しているから、同人の当選は無効である。ここにおいて、選挙人の一人である原告は右選挙の是正を欲し、昭和二十六年五月八日布施市選挙管理委員会に対し右当選の効力に関する異議の申立をしたけれども同委員会は同年五月三十一日附を以て原告の異議申立を棄却する旨の決定をした、そこで原告は更に右決定に対し同年六月十四日被告委員会に訴願をしたが、同委員会は同年八月二十三日附を以て原告の訴願を棄却する旨の裁決をし、その裁決書は同月二十五日原告に送達されたので、本訴請求に及んだと述べ、被告及び補助参加人の主張事実を否認し、被告は本訴において、当初、補助参加人が昭和二十六年三月十五日組合会議の副議長に口頭による辞職の申出をした事実がなかつたように陳述しながら、昭和二十七年四月十六日の口頭弁論論期日において、右事実があつた旨陳述しているのは自白の撤回であるから撤回に異議がある。補助参加人の主張は布施市選挙管理委員会の決定、被告委員会の裁決における認定事実と異り、特に被告委員会の訴願審査に際しては補助参加人より右同一の主張をしたが裁定では右主張を認めなかつたのであるから、補助参加人が本訴において右主張をすることは右決定及び裁決に不服を主張することとなる、公職選挙法は訴願前置主義をとつているのであるから選挙管理委員会の決定及び裁決に不服のある者は法定期間内に夫々訴願及び訴訟をしてこれを主張しなければならない、補助参加人の右主張は右手続を経ていないから到底許されない。仮に本訴において右主張が許されるとするも、被参加人(被告)は右主張事実がなかつたように陳述しているのであるから、補助参加人の右主張は明らかに被参加人の行為と牴触するものであつて無効である。と述べた。(立証省略)

被告は主文第一項同旨の判決を求め、答弁として、鶯地一隆が原告主張の選挙にその主張日時立候補の届出をし、当選したこと及び、右当選の効力に関し原告主張のとおり異議申立、決定及び訴願、裁決並びに裁決書の送達があつたことは認める。しかしながら右鶯地の立候補は次の理由により公務員の立候補制限に違反しない。即ち、

一、昭和二十六年三月十五日組合会議閉会後において、同会議議長である右鶯地は同会議の副議長である訴外橋川嘉一郎に対し、口頭にて組合会議員の辞職を申出で、同副議長は即座にこれを許可したから、鶯地はこれにより組合会議員(したがつて、組合会議長)を辞職した。

二、仮に、右事実が認められないとするも、鶯地は同年四月一日組合助役山本佐支男宛に辞職届を提出し、組合及び組合会議長及び組合会議員の辞職の申出をしたのであるが、元来、組合管理者及び組合会議長は非常勤であつて殆ど出勤しないため、組合会議の事務は総て右山本助役が代理して処理し、管理者及び議長の後閲を受ける慣例になつていたので、同日鶯地外十二名から提出された辞職届に対し、同助役において、即日組合会議長(鶯地については副議長)を代理して許可を与えた、これにより鶯地は適法に辞職した。

三、仮に右四月一日の辞職の申出に対し適法な許可を得なかつたとするも、同日以後五日に相当する同年四月六日に公職選挙法九十条により辞職したものとみなされる結果、前記選挙の立候補届出期間内に辞職の効果が発生したのであるから鶯地の立候補届出は辞職の効果発生と共に有効な立候補届出となる。

四、仮に右四月一日の辞職の申出に対し適法な許可を得なかつたため、鶯地の立候補は公務員の立候補制限に違反するかしがあつたとするも、右かしは軽微であり且立候補届出より当選決定に至る一連の手続において右かしが発見されなかつたのであるから右かしは治癒されたものである。

と述べた。(立証省略)

補助参加人は、補助参加人は昭和二十六年三月十五日組合会議の閉会後、組合会議副議長橋川嘉一郎に対し、口頭で議員の辞職を申出で即座に同副議長の許可を得たからこれにより適法に辞職したのであるが、仮に右事実が認められないとするも、右副議長は同年四月一日補助参加人から提出の辞職届を見て、辞職を許可したから、同日補助参加人は適法に辞職したと述べた。(立証省略)

三、理  由

昭和二十六年四月二十三日施行の布施市会議員選挙に際し、鶯地一隆が同年四月三日立候補の届出をし、当選人と決定したこと、及び、同人が本件組合会議長であつたことは当事者間に争いがない。

原告は右鶯地は右立候補届出の際には右組合会議長を辞職してないから公務員の立候補制限に違反し、同人の当選は無効であると主張するのに対し、被告及び補助参加人は昭和二十六年三月十五日同組合会議の閉会後鶯地は口頭にて副議長橋川嘉一郎に右辞職を申出てたところ同人は即座にこれを許可したから、これにより辞職したと主張するから、この主張の当否について判断する。

原告はまづ、被告の右主張は自白の撤回であり、撤回に異議がある旨主張するけれども、被告の右主張は昭和二十七年四月十六日の口頭弁論期日においてなされたのであるが、その前においては被告は右主張事実に関係ある陳述をしたことはないのであつて、もとより右辞職の事実がない旨自白したことはないから、原告の右主張は採用の由がない。

次に原告は右主張事実は原告が本件当選の効力に関してなした異議及び訴願に対する布施市選挙管理委員会の決定及び被告委員会の裁決における認定事実と異るのであるから、右決定及び裁決に対する不服申立の手続を経ずして補助参加人が本訴においてこれを主張することは許されないと主張するけれども、仮に右主張事実が右決定及び裁決における認定事実と異ることありとするも補助参加人が訴訟において右事実を主張することは妨げないと解する。

原告は更に補助参加人の右主張は被参加人(被告)の主張と牴触すると主張するけれども被告はこれと同旨の主張をなしたこと前認定のとおりであるから原告の右主張も採用できない。

そして成立に争いのない甲第一号証によると組合規約十三条には組合会の組織、組合会議員の選挙吏員の組織及び選任其の他本規約に規定なきものは地方自治法を準用するとあつて、組合会議員及び同会議長の辞職については同規約に規定がないから、地方自治法が準用されることになり、同法一二六条によると、議会の議員は議会の許可を得て辞職することができるが、閉会中においては議長の許可を得て辞職することができ、又同法一〇六条によると議会の議長に事故があるとき又は議長が欠けたときは副議長が議長の職務を行うものであるところ、証人橋川嘉一郎、同笠原健治郎、同守山浅吉、同鶯地一隆の各証言によると、昭和二十六年三月十五日午後組合会議が開かれ、同会議の議長である鶯地は同議会におい自己の議員辞職の許可を得る考えであつたが、開会が予定時間より一時間以上も遅れた上、組合管理者である布施市長の所用のため、議案の審議を急ぎ、約二十件の議案を審議して直に閉会したため、辞職許可につい議会の許可を得る機会がなかつた、そこで右閉会後懇親会が開かれる迄の間同会議室において休憩中、鶯地は副議長である訴外橋川嘉一郎に対し口頭にて自己の議員辞職を申出でたところ、同人は会議の席上において申出て欲しかつたが既に閉会後であるから自分において辞職を了承すると申向け、鶯地の組合議員辞職を許可したことを認めることができる。尤も成立に争いのない甲第三号証及び証人笠原健治郎の証言によると、鶯地は昭和二十六年四月一日組合助役宛の辞職届を提出したことを認めることができ、成立に争いのない甲第二号証には鶯地は、四月一日辞職した旨の記載があるが、右証人笠原、及び証人守山浅吉、同橋川嘉一郎、同鶯地一隆の各証言を綜合すると、組合副議長橋川は鶯地が既に同年三月十五日辞職したことを組合事務当局に電話による連絡をしようとしたが通じなかつたので、そのままにしておいたところ、当時、組合会議員のうちから同年四月施行の市町村長及び市町村議会の議員に立候補する者が十数名予想されたので、組合書記笠原健治郎は組合事務の整理上、立候補予定の組合会議員から辞表を提出せしめる必要があると考え、同年四月一日組合書記守山浅吉をして辞表を取り集めるため当時立候補の噂のある組合会議員宅を訪問せしめたので、守山は同日鶯地方を訪ねたが同人不在で、同人の弟から同人の行先に電話連絡の結果さきに既に口頭にて辞職したが事務整理上必要ならば辞職届を書けとのことであつたので、同人の弟において、兄に代り甲第三号証の辞職届を作成して守山に交付したこと及び右甲第二号証の前記記載は右笠原が右辞職届によつて書入れたにすぎないことを認めることができるから、右甲号証によつては前記認定を動かすことができず他に右認定を左右する証拠はない。

そうすると鶯地一隆は昭和二十六年三月十五日組合議員従つて同議長の職を辞したこと明らかであり、同人の立候補は公務員の立候補制限に違反しない。結局同人の立候補を有効と判断して原告の訴願を棄却した被告の裁決は違法ではない。したがつて右立候補の無効を主張して布施市選挙管理委員会の決定及び被告の裁決の取消並びに鶯地の前記当選の無効の宣言を求める原告の本訴請求は其の他の点について判断するまでもなく失当であるからこれを棄却すべく、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条九五条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 大野美稲 熊野哲五郎 村上喜夫)

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