大阪高等裁判所 昭和26年(ネ)270号 判決
控訴人は原判決を取り消す。被控訴人が昭和二五年四月二八日大西仙太郎に対し食糧緊急措置令にもとずいてなした昭和二四年度産米九俵と三九瓩七五〇瓦に対する収用処分を取り消す。訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする旨の判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
控訴人はその請求原因として、控訴人はその夫大西仙太郎と共に控訴人肩書地にて農業を営む者であるところ、生産者大西仙太郎は昭和二四年度米の供出について居村南郷村長から昭和二五年一月九日附で補正割当数量として五石三斗七升六合(その後昭和二五年三月一八日附で五石六升五合に変更された)の通知を受け、そのうち一石二斗を供出したが爾余は大阪府における昭和二四年度産米の供出期限である昭和二五年二月末日後もこれを供出しなかつため、被控訴人は同年四月二八日請求の趣旨記載の米穀を収用したものである。然し南郷村長は昭和二四年度産米の事前割当については昭和二四年四月中農業計画を指示すべきにかかわらず、昭和二五年一月九日に至り初めて大西仙太郎に対し割当供出量六石六斗七升六合、補正量一石三斗、補正割当供出量五石三斗七升六合と生産者別農業計画の変更を指示し、更に昭和二五年三月一八日割当供出量六石三斗六升五合、補正量一石三斗、補正割当供出量五石六升五合と生産者別農業計画の変更を指示してきたばかりでなく、昭和二四年度における南郷村の総作付面積は二六七町あるのにこれを二三一町九畝二五歩と、南郷村字新田の総作付面積は五五町六反三畝九歩あるのにこれを五〇町三反二畝二四歩と報告し右報告反別を基準として事前割当をしているので、反当りの事前割当の数量が多くなり従つてこれにもとづく本件補正割当の数量は不当である。大西仙太郎はこの割当に対し不服であつたので南郷村長及び被控訴人に対し異議を申し立てたが何等決定を与えないで、右違法な割当にもとづいてなされた本件収用処分も亦違法として取り消さるべきものであると述べ。なお本件収用処分によつて収用された昭和二四年度産米が大西仙太郎の所有であることを認め、被控訴人の本案前の抗弁に対し控訴人は大西仙太郎の妻であつて、夫仙太郎が昭和二四年一〇月一一日新田実行組合から除名せられた後は本件供出に関しては控訴人がその交渉に当つているものであるから当事者として本訴を提起する適格があると述べた。
被控訴代理人は本案前の抗弁として、本件収用処分は大西仙太郎に対する昭和二四年度産米の生産者別農業計画の指示にもとづいて同人所有の昭和二四年度産米についてなされたものであるから、大西仙太郎がその処分の取消を求めるなら格別控訴人には当事者たる適格がないから本訴は不適法であると述べ、本案に対する答弁として、南郷村長が昭和二四年度産米について昭和二五年一月九日大西仙太郎に対し控訴人主張の如き生産者別農業計画の変更を指示し、更に同年三月一八日控訴人主張の如くこれを変更指示したところ、大西仙太郎は変更供出数量五石六升五合に対し一石二斗を供出しただけで供出期限後も三石八斗六升五合の供出をしなかつたので、被控訴人は昭和二五年四月二八日大西仙太郎に主要食糧収用令書を交付し同日本件収用をなしたもので、右収用処分は適法に行われ何等の違法がない。なお昭和二四年度産米の供出についてはその作付前に生産者別農業計画が指示せらるべきではあるが、町村によつては遅延したところもあり、食糧確保臨時措置法による最初の事前割当としてやむをえなかつたものである。又昭和二四年度における南郷村の総作付面積は二三一町九畝二五歩、完全農家面積は二一五町五反五畝三歩で、同村字新田の総作付面積は五五町一反一畝一八歩、完全農家面積は五〇町三反二畝二四歩であるからこれを基礎として事前割当がなされたもので供出割当は完全農家に割当てらるべきもので本件割当数量についても何等違法はないと述べた。(各証拠省略)
三、理 由
本件収用処分は大西仙太郎が南郷村長の指示した昭和二四年度の生産者別農業計画に従い完全供出をしなかつたため大西仙太郎所有の昭和二四年度産米についてなされたものであることは当事者間が争がない。そうだとすると控訴人が大西仙太郎の妻であつて共に農業を営み夫仙太郎が新田実行組合から除名された後は本件供出に関し一切その交渉に当つているというだけでは右収用処分について何等法律上の利益を有する者とはいえず、右収用処分によつてその利益を害せられるものでないから、その取消を求める利益がなく、従つて控訴人には当事者適格がないばかりでなく、その他控訴人の主張するところは本件収用処分が違法に行われたというのでなくその基本たる大西仙太郎に係る昭和二四年度の生産者別農業計画の指示が違法に行われたというに帰し、それならば大西仙太郎において南郷村長を相手方として訴によりその救済を求むべきであつて、右生産者別農業計画が違法に行われたことを原因として被控訴人がなした本件収用処分の取消を求め得ないものと解するを相当とし、本訴はいずれの点からいうも失当であつてこれを排斥した原判決は結局相当であり、本件控訴はその理由がない。よつて民訴第三八四条、第八九条を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 吉村正道 林平八郎 大田外一)