大阪高等裁判所 昭和26年(行ウ)1号 決定
本件申立の理由は申立人は被申立人が昭和二十五年二月二十二日爲した被申立人議会の議員である申立人を除名する旨の決議に対しその取消訴訟を京都地方裁判所に提起し勝訴したが被申立人から控訴申立をし右事件は大阪高等裁判所に係属中である。然し、申立人は目下公職に対する復権及び復職を阻止せられているに拘らず村内事情は町村合併の問題を初め一般村政について申立人の活動を必要とするから被申立人がした前示除名処分の執行停止を求めるというにある。
然し行政行爲は司法裁判所の裁判と同じく、その何れもが固有の執行力を有するものではなく、行爲自体によつて、すでに国家意思は実現せられ、これが爲更に進んで何人かに対し強制を施す必要のないものもある。民事訴訟法上、給付の判決だけが執行力を有すると同じく行政行爲においても義務者に対し行爲不行爲を命じた下命行爲だけが執行力を有すること勿論である。
もつとも民事訴訟法においては、裁判がこのような狹義における執行力を有しなくても、その裁判に基いて強制を用いないでその内容に適合した状態を実現し得る場合があつて、この場合にもその状態の実現をもつて執行と呼んでおる例が少くない。いわゆる廣義の執行力と称するものがそれであり、行政行爲にあつてもこの種の反射的効力を有するものがあること勿論であるが停止命令によつて停止することのできる執行は、このような狹義又は廣義の意味における執行に限るものである。(当廳昭和二四年(ラ)第六八号同年十二月二日決定参照)しかして行政行爲によつて発生した効力を悉く停止するようなことは結局効力が発生しなかつたと同一の仮の地位を與えようとするもので、仮処分だけがよくこれをなし得るのであるが、行政事件訴訟特例法第十條末項によると行政廳の処分については仮処分に関する民事訴訟法の規定を適用しない旨を定めているから行政処分に対し仮処分の許されないのは明らかであり、しかも本件行政処分は右に述べた何れの意味における執行力をも有しないのであるから、申立人の求めるような効力の停止はこれを許さないものと云わねばならない。
よつて民事訴訟法第八九條第九五條を適用して主文のとおり決定する。
(裁判官 大嶋京一郎 林平八郎 大田外一)