大判例

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大阪高等裁判所 昭和27年(う)1100号 判決

弁護人は、原審は第一回公判で被告人が午後三時頃藤田由太郞方で同人から自転車一台を詐取した旨の起訴状の事実を審理した後第二回公判で午後五時頃村田清一をして木村方で入質橫領した旨訴因を変更し、後者について有罪の判決をしたのであるが、公訴事実の同一性がないから右変更を許容した原審の措置は違法であり、右変更前に同意した書面を変更後の訴因の証拠にするのは不当であると主張する。

しかし、記録を調査するに本件起訴状記載の事実は被告人は昭和二十六年十二月三十一日午後三時頃磯城郡川西村藤田由太郞方で同人に対し返戻する意思がないのに拘らずこれあるが如く装い、石見駅迄荷物を運びたいので一寸自転車を貸して貰いたい、はこんだらすぐ返すと嘘をついて同人を欺き因つて寸借名下に同人所有の自転車一台を騙取したというのであるが、訴因変更請求書記載の事実は被告人は昭和二十六年十二月三十一日午後三時頃磯城郡川西村藤田由太郞から同人所有の自転車一台を寸借名下に借受け、これを保管中同日午後五時頃擅に村田清一をして磯城郡田原本町質商木村啓治方に入質をさせて橫領したというのである。すなわち起訴状記載の事実は被告人が藤田由太郞から本件自転車を借受けた事実を詐欺に該当するものとしていたが、訴因変更請求書はこの借受けた事実を詐欺とみないで、本件自転車を借受けた後これを他人に入質橫領した事実を訴因としているのである。従つて本件犯罪の対象である自転車は被告人が藤田由太郞方で借受けた同一物であり、犯行の日時は同日で僅か二時間の差にすぎないし行為は共に領得であつて前者が借受行為自体であるのに後者はその処分行為である。しかも犯行の場所は同一郡内で近接している、従つて本件の詐欺と橫領の事実は共にその基本的事実関係は同一であると言わねばならないから公訴事実の同一性は失われていない。これが変更を許容した原審の措置は適法である。しかして記録を精査してみても本件訴因の変更によつて被告人の防禦権が不当に制限されたという疑は少しもない。論旨は理由にならない。

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