大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和27年(う)1742号 判決

所論の要旨は被告人小島三郎は本件偽造には関係なく偽造乗車券行使の責任より外負うべきものがないのであつてこの点の原判決の認定は事実誤認である(以上A弁護人の論旨)、被告人洪順栄は吉田正夫その他の被告人との間に全然意思の連絡がないのに拘らず共同正犯と認定し刑法第六十条を適用処断した原判決は事実を誤認し、法令適用を誤つた違法がある(以上B弁護人の論旨)というのである。

しかし、原判決挙示の判示第一事実に関する証拠を綜合すれば原審相被告人吉田正夫の発意に基き同人は先づ藤田順吉に次いで小島三郎、砂川数一に大阪市電回数券を偽造してこれを販売することを順次相談の上、吉田が印刷関係を藤田、小島、砂川等はその売先を、それぞれ引受けることとなつた事実そして吉田において印刷先を物色し、陳呈起がこれを引受け同人はこれを何朋通に依頼し、更に何朋通は前川寿夫に、前川は高山事高辛敦及び洪順栄に順次これが印刷方を依頼した結果、洪順栄においても行使の目的の下に偽造するのであることを認識しながら、原判示乗車券の印刷労務を相当することになりその偽造を遂げた事実を肯認することができる。そもそも多数人の共同正犯を認定する場合その全員につき相互にそれぞれ直接犯意の連絡のあることを必要としないのであり、その一部の者の間に意思の連絡があつてこれを通じ、順次間接的に他の者に犯意が連絡して全員に及び犯行が行われたときは、全員は共同して、各自己の犯意を実現したものとして、共同正犯の責任を負うものと解すべきである。さすれば本件においては敍上の事実関係よりみて被告人小島三郎はその分担が売先を探すことにあつたにせよ判示偽造の点についても、吉田、藤田等との間に通謀関係があり、被告人洪順栄は高辛敦及び前川との間に右偽造の意思の連繋が存し、これを介し間接的には偽造の犯意の連絡が全員に及ぶものと認められるのであるから所論他の者との直接の意思連絡の有無に拘らず原判示の如き共同正犯としての事実認定、法律適用を受けるのは当然であつて、記録を精査しても原判決には所論の事実誤認、法律適用を誤つた違法なく論旨はいずれも理由がない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!