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大阪高等裁判所 昭和27年(ラ)26号 決定 1952年12月09日

抗告人 中山次郎

右代理人弁護士 吉村秋男

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告の要旨は末尾記載の通りである。

抗告人主張のように原審判は財産分与に関する法律の精神を誤解したり、又著しい偏頗な審判をなしたと認める資料なく、尚抗告人が反ばく主張する事実については原審で調査の上証拠に基いて認定しているところであつて、事実の真相と遊離した認定とは思はれず何等法の精神にもとるところなく、その他原審判を取消すべき「かし」もないので抗告は理由ないから棄却することと抗告費用は民事訴訟法第八十九条に則り主文の通り決定する。

抗告の趣旨

原審判を取消し申立人の申立を棄却する旨の御裁判を求める。

抗告の理由

第一 原審判は財産分与に関する法律の精神を誤解せるのみならず、抗告人の証人その他の証拠申請は殆んどこれを顧ることなく、相手方の主張及び立証を無条件に許容し著しく偏頗な審判を為したものであつて到底抗告人の承服し能はざるところである。

第二 即ち原審判はその理由に於て抗告人の主張を充分聴取せず相手方の主張にのみ耳を傾けてこれを鵜呑みにし、事実の真相と遊離した認定を為したものであつて凡そ事実の一端を知る者をして唖然たらしむるものである。

よつて抗告人はその主張を明確にする為め原審判に於ける認定事実を左の通り反駁主張するものである。

即ち

(イ) ○○○市○○町○○番地の宅地百五十坪は代金一千二百円也、又同市○○町○○○番地の宅地四十七坪同地上の木造瓦葺平家建住家一棟建坪十九坪四合二勺は代金十万円也で何れも抗告人が他より買受けた事実は認めるけれども、右代金は抗告人がその兄中山一蔵から分家料として贈与せられた金員で買受けたものである(この事実は証人中山一蔵の証言によつて立証せんとする)。

(ロ) 抗告人と相手方とが円満な夫婦生活を営み得ない様になつたのは性格の相違に基因するものではない。

相手方と抗告人とが夫婦生活を継続し難い状態に陥つたのは相手方が訴外河村平一(原審証人)と昭和二十三年八月頃から不倫の関係を結ぶようになり、勤先から一旦帰宅した後再び外出したり、又勤先からその儘夜の十一時十二時頃迄家を外にして待合料理屋を遊び廻り酩酊して夜更けてから帰宅することも一再ではなかつた。従て朝起も悪くなり抗告人は朝夕食の仕度から子供の世話一切を引受けて為さなければならなかつたのである。又他面相手方の此の様な仕業を子供に見せることが教育上甚だ憂慮に堪えないので抗告人は相手方と離婚することを決意するに至つたのである(この事実は証人川田政、新田太郎、上川真等の証言によつて立証せんとする)。

(ハ) 尚相手方は電話交換手として関西電力株式会社○○○配電局に勤務していたことは認めるけれども、相手方が受取る月給その他の給与は素より相手方が戦時中戦後を通じて繊維品の闇取引で儲けた金は全然抗告人の家計の中に入れたことがない。現在相手方の居住している家屋は相手方が右自己の収入を蓄積した金を以て訴外富村松助から此代金三十二万円也で買受けたものである。

第三 以上の次第であつて抗告人が相手方の協力によつて蓄財を為したと言うよりは寧ろ相手方の為め教育者としての名誉信用を毀損失墜せしめられると共に、家庭的に親子離散するの憂目を見るに至りその精神的並に経済的に受けたる損害は甚大である。

右の如き事情の許に於て不倫の妻に対し尚且つ財産分与を命ずるが如きは法の精神に惇るものであると信ずるものである。

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