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大阪高等裁判所 昭和27年(ラ)37号 決定 1952年6月28日

抗告人 田中政夫

主文

原審判を取り消す。

理由

本件抗告理由の要旨は田中政夫が昭和二十三年一月二十二日死亡しその長男である抗告人、長女皆川京子、二男進、二女斎藤幸子の長男達夫、六男亡隆次の長男秀夫の五名において、共同相続をしたものであるところ、抗告人以外の四名は昭和二十七年一月抗告人から聞いて始めて右相続開始の事実を知つたが相続する意思がないので、昭和二十七年三月一日原裁判所に相続抛棄の申述をなした。然るに原裁判所は田中秀夫以外の者の申述を受理しながら、独り、秀夫の申述についてはその親権者である田中敬子において被相続人死亡の昭和二十三年一月二十二日当時秀夫のために相続開始のあつた事実を知悉していたものであるから、秀夫は右申述以前にその相続につき既に単純承認をしたものであり、更に抛棄の申述をなすことは許さないとして右申述を却下する旨の審判がなされたが、田中敬子は被相続人の配偶者及び子供等に相続権のあることは知つていたが、その孫にも相続権のあることを知らなかつたのが真実であり、原審判は事実を誤認してなされたものであるからこれを取り消し抗告裁判所において自ら審判に代わる裁判を求めるというのである。

よつて考えて見るのに、抗告状添付の田中敬子の手記及び当審における田中敬子審訊の結果によると、田中敬子がその長男秀一の法定代理人として、秀夫のために被相続人田中次郎の死亡に因る相続の開始があつたことを知つたのは昭和二十七年一月中旬であつて、右次郎死亡の昭和二十三年一月二十二日当時でなかつたことを認むるに十分であり、原審における田中敬子の審問の結果は田中敬子の誤解にもとずいてなされた真実に反する陳述であることが冒頭掲記の証拠によつて明白であるから右認定をなすの妨げとならない。そうだとすると申述人田中秀夫の法定代理人である田中敬子が秀夫のために相続開始のあつたことを知つた日から三ヶ月内である同年三月一日なした本件相続抛棄の申述は適法なものとして受理しなければならない。従つて右申述を却下した原審判は失当であるからこれを取り消す。然しながら右申述の受理は相続抛棄の申述のあつたことを公証する行為であつて裁判でないから、原裁判所においてなすべきもので当裁判所において代つてなすべきものではない。よつて主文のとおり決定する。

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