大阪高等裁判所 昭和28年(う)1328号 判決
古物営業取締法施行規則第二十二条第一項により、古物商が相手方より呈示を受くべきものは必ずしも同条列記の書類に限らず、相手方の住所氏名を確認するに足るものであればよい訳ではあるが、斯る書類の呈示を要求する所以は、賍物等不正品を持ち来るものは住所氏名を詐り易いものであるから、相手方の自供だけではこれに信を措き難く、然るに同条列記の如き書類を所持するものは一応その名義人なることを窺ふに足るから、これによりて自供の住所氏名を裏付けせしめようとしたものである。然らばたとえ相手方に自署拇印せしめたからと云つても、これは只相手方の自供と同一価値を有するに過ぎないものであつて、その他に確認の資料たるべき何等の書類等の呈示を受けないときは、未だ以て同条所定の確認手続を経たものと云ふことはできない。若し被告人の主張が相手方の自署拇印を以て、同条所定の要求を満すものと解してゐたとの意味ならば、これ法律を知らざる場合に該当し、犯罪の成立には影響がない。尚論旨は原判決引用の別表第一の物品買受の相手方は顔見知りであつたと主張するけれども原判決引用の被告人の司法警察員に対する供述調書に依ればこの相手方も未知の者なる旨を窺知できる供述をしてゐるのみならず被告人がその者の身元を知りつくしてゐた事実を認め得る資料はないから、本論旨はすべて理由がない。