大判例

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大阪高等裁判所 昭和28年(う)2452号 判決

弁護人は、原判決はいわゆる貸金業にいう業とは反覆累行する行為であると解しているけれども、これは不正金融防止を目的とする法の精神を没却し特定人に対する慈恵的貸借も数回に分けてなした以上右業に該当することとなる不合理があると主張する。しかし、本件が特定人に対する慈恵的貸借でないことは、後に説明する通りであるから、当裁判所の認めない前提に立つ本論旨は採用できない。

弁護人は、業として行うというのは不特定又は多数人に対して利益を得て反覆継続してなすことであるから特定人に対してなされた行為は貸金業とはいえない。同法第三条、第七条第二項及び第九条乃至第十三条の規定に徴するも貸金業が不特定若しくは多数人を対象として継続的になされることを要することが明らかである。昭和二十七年十二月八日福岡高等裁判所判決昭和二十六年三月三十日大阪高等裁判所判決は右見解を支持すると主張する。

所論引用の如く当裁判所は先に、貸金業を行つたといいうるがためには客観的に観察して貸金業としての形態を備えた行為がなければならない。貸金業者が普通にとつている程度の利息をとつているかどうか或はあそこに行けば金が借られるということが相当数の人々に知られているかどうかというような事情はこれを決する重要な標準であると説示したのであるが、この判例の趣旨に従つて本件事案を観察しても原判決の結論は是認できる。

すなわち原判決挙示の証拠によれば本件の貸主今西楳太郎及び今西末吉は共に誰に貸すかわからずに貸したところ偶々本件の金銭がすべて不動産証券株式会社に貸与されており、被告人は右貸借については今西両名から前後五回に日歩十五銭で借りながら右会社に十八銭で貸与しているのである。

金銭貸借の媒介をするに当つて日歩三銭の利得を収めるような行為は、特定人に対する慈恵行為ではなくて、利得が得られさえすれば誰にでも金銭借用の斡旋をしてやる意思の存在を推認できる行為である。これが金銭貸借の媒介業としての形態を備えている行為であり、かかる行為はたまたま一回であつても不特定人に対する媒介の意思すなわち継続反覆の意思の下になされた行為と認めて差し支えがないのである。

弁護人は、被告人はたまたま懇意の間柄にある笠原武夫に依頼せられるまゝ恩義に報ゆるために貸主を求めて金銭貸借の媒介をなしたものであり蟻川光治の関係も同様である。すなわち被告人は特定人に対してのみ慈恵的に且つ偶発的に本件媒介をしたにすぎないから貸金業を営んだということはできないと主張する。

しかし、原判決挙示の証拠によれば被告人は藤浪証券株式会社の外務員であり本件の貸主今西楳太郎は被告人を介して株の売買をするうち知合となり今西末吉も同じく被告人を介して株の売買をしたところから知合となつた間柄であり、いずれも誰に貸すのかも知らずに被告人にたのまれるまゝに貸した事実、本件の借主は不動産証券株式会社の当時の社長笠原武夫と取締役蟻川光治でいずれも右会社のために借受けた事実及び本件の金利は被告人が右貸主から日歩十五銭で借りこれを右借主に日歩十八銭で貸付けその間において日歩三銭の利得をした事実が認められる。従つてかような貸借の媒介は社会通念上恩義のためになされたものということはできないし、たまたま特定会社のためにのみなされたにしても右法律にいう貸金業たるを妨げない。

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