大判例

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大阪高等裁判所 昭和28年(う)304号 判決

原判決が冒頭において、昭和二十五年一月京都市に於て施行された外国人登録証明書の切替については、同証明書の作成権限は各区長にあるのであるが、その実際上の作成手続としては外国人登録切替措置要領及び京都市区役所事務分掌規則に基き、各区役所戸籍課寄留係の所管として窓口受附係に於て申請人提出の外国人登録証明書、申請書、申請人の写真並びに旧登録証明書を旧登録原簿貼付写真と照合確認の上これを受理し、次いで作成係員に於て新証明書用紙に所要事項を記入し、係長に於て同人保管に係る区長の職印を押捺の上新外国人登録証明書として申請人に交付するものであつて云々と判示しながら、第一の(二)において被告人加藤和夫が原審相被告人志知治と共謀して、第二の(二)、及び(四)において被告人加藤和夫が単独でそれぞれ京都市下京区役所に於て行使の目的を以つて作成権限者でない右区役所の外国人登録係員をして同所備付新外国人登録証明書用紙に登録者の氏名等所要の記載をさせ、発行者欄に京都市下京区長、川勝学而の職印等を押捺させて下京区長作成名義の外国人登録証明書を擅に作成偽造しと判示し、右用紙に所要の記録をした係員の氏名を明示せず、又右職印等を押捺したのが、昭和二七年一一月一五日附検察官の訴因変更請求書の如く、戸籍課寄留証明係長竹谷圭一であつた旨を摘示しなつたのは、公判廷において多数の供述調書や証人等を取調べたに拘らず、当該係員を指定することができず、又証人竹谷圭一から本件証明書に区長印を自ら押捺した旨の証言を得ることができなかつたため、抽象的に登録係員と判示したものであることが窺知せられ、右の原判決摘示事実は挙示の証拠によつてこれを認め得られないことはないのである。

しかして本件犯行当時施行の外国人登録令(昭和二四年政令第三八一号)附則第三項によると、外国人登録証明書の作成権限は京都市にあつては区長に専属せしめられていたのであつて、同項に明文はないけれども区長が欠けた場合又は故障のため事務を執ることができない場合に限り臨時代理者がこれを作成し得るが、この場合には臨時代理者名義を以つて作成すべきであつて、区長名義を用うべからざるものと解すべきである。たゞ原判決も説示するが如く区長自ら外国人登録令施行規則(昭和二二年内務省令第二八号)第三条の申請事項の審査、確認、登録及び登録証明書の交付等一切を処理することは事実上不可能であるから、実際には外国人登録切替措置要領及び京都市区役所事務分掌規則に基き主管課の係員をして事務を分掌せしめ、特に区長の職印はこれを保管せる寄留証明係長がこれを押捺することに定められていたが、これもとより事実上便宜の取扱に出でたものであつて、条例、規則は勿論上司の命令をもつてするも権限を移譲することは法律上許容せられていないのである。

しかして文書の有形偽造と無形偽造との区別を当該文書作成権限の有無によつて決せんとするのが通説であるが、本件外国人登録証明書の如くその作成権限が法令の規定に明記せられているが如き場合には、法令上権限ありとせられている者のみが当該文書作成の権限を有するものと解するを相当とする。されば区長以外の者に法令上の権限の認められていない場合、当該区役所の外国人登録に関する事務に従事する吏員その他の職員が区長印を保管せる係長の隙を窺い右職印を盗捺したときは勿論密入国者や所在不明者については外国人登録申請書を受理すべきではないのにこれを所定の比照(原判決にいわゆる照合)確認の手続をなさずして受理し、かゝる不正手段により登録証明書を作成せしめたときと雖も(この場合には犯意なき者を利用したいわゆる間接正犯の法理により)刑法第一五五条第一項の偽造罪が成立し、同法第一五六条の偽造罪とはならないものといわなければならない。しかも原判決は被告人等が区長印を盗捺して登録証明書の偽造を遂げたと認定していないのである。所論はひつきよう独自の見解に立つて審理不尽ひいては原判決に誤認あることを主張するものであつて論旨は採用し難い。

(註 本件は量刑不当により一部破棄自判)

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