大阪高等裁判所 昭和28年(う)402号 判決
原審の認定によれば、被告人富田は、その前任地である大阪市東税務署に在勤中法人税の調査をしたことのあるライト産業株式会社の代表取締役たる被告人地主から右調査に際し寛大な取扱を受けたことに対する謝礼の趣旨で現金四万円を兵庫県芦屋税務署に転任した後において借用名下に収受し被告人地主はこれを交付したものであるけれども、被告人富田は、右転勤の前後を通じひとしく大蔵事務官として直税課法人税係の職にあつて、法人税賦課の事務を担当していたものであるから、被告人富田が東税務署在勤中予め約束があつたと否とにかかわらず、贈収賄罪は成立するのである。なんとなれば、公務の威信と厳正とを保護しようとする涜職罪の立法の趣旨ことに刑法第一九七条ノ三第三項において公務員たる地位を失つた者についても一定の場合賄賂罪の成立することを規定している点を考えると、本件のように公務員の職にある者が単に勤務地を異にしたということだけで贈収賄罪の成立を否定する実質的理由がないからである。判例も、所論のように予め約束があることを要するとは解していない(大審院昭和九年一二月四日判決、昭和一一年三月一六日判決参照)
(後略)