大判例

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大阪高等裁判所 昭和28年(う)747号 判決

よつて按ずるに、窃盗罪の成立に必要な不法領得の意思とは、権利者を排除して、他人の物を自己の所有物と同様に、その経済的用法に従い、利用し又は処分する意思をいうのであるから(最高裁判所昭和二六、七、一三言渡判決参照)犯人において、いやしくも、かかる意思をもつて他人の支配内にある自己以外の所有物を、自己又は第三者の支配内に移すにおいては、窃盗罪が成立することもちろんといわなければならない。そこで本件についてこれを観ると、本件被告人は、酒井愿一等の所有に属し、その支配内にある、判示小田山田所在山林内の立木十三本の経済的価値を、自己に取得する目的で、第三者たる山田磯五郎に対し、右立木につき、自己が他に売却処分するの権限があるもののように詐り、これを売渡し、同人からその代金名義で金六千円の金員を交付せしめ、又一方、当時右磯五郎をして右立木を伐採せしめて、これを酒井等の支配内から磯五郎の支配内へ持去らしめたものであることが記録に徴し明らかである。すると、被告人の各一連の行為は、磯五郎に対し詐欺罪を行つたものであると同時に、他面被告人が領得の意思をもつて磯五郎の手を籍り、間接に酒井等の占有するその所有の立木を磯五郎の支配に移し、これを窃取したものと認められるから、この点においては森林窃盗罪の成立を見ることもちろんであつて、しかも、右の一個の行為をもつて、詐欺及び森林窃盗の二罪に触れるものと解するのを相当とする。(最高裁判所昭和二五、五、十八、判決参照)。然らば、右の如く被告人が磯五郎をして本件の立木十三本を伐採せしめた事実をもつて、単に詐欺の手段に過ぎないものとし、従つて被告人にはこれを領得するの意思がなかつたものとして無罪を言渡した原判決(原判決主文第四項中「山林立木松、杉、檜計十二本」とあるのは、「山林立木松、杉、檜計十三本」の誤記と認める)には、法令の解釈適用を誤つた違法があること明らかである。しかし、原判決は、右森林窃盗と処断中一罪の関係にある詐欺につき、その犯罪事実を認めているのであり、且つ、右詐欺と森林窃盗とは、その法定刑において遙かに前者の方が重く、右両者は結局刑法第五十四条第一項前段、第十条に則り重い詐欺罪の刑に従い処断されることになるのであるから、原判決の右の程度の違法をもつて、直ちに判決に影響を及ぼすものとは認めがたい。すると原判決はこの点において未だ破棄するの要なく、論旨は結局その理由がない。

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