大阪高等裁判所 昭和28年(う)855号 判決
按ずるに、原判決は、「被告人が昭和二十七年八月十六日頃当時同居先の大阪市生野区大瀬町一丁目六十番地平山善啓こと申仁善方で、またいとこ(六親等の血族)に当る同人所有の自転車一台を窃取したものである」との事実を認定し、これに対し、刑法第二百四十四条第一項前段、第二百三十五条を適用して、被告人に対し刑を免除する旨の判決を言渡した。しかし、記録によると、被告人及び被害者申仁善は互に母方の再従兄弟の間柄にあるのであるが、共に韓国(南鮮)人であるから、その親族の範囲その他の親族関係は、その本国法である韓国の法令により定めらるべきものであることは、法例(明治三十一年勅令第百二十三号)第二十二条の明定するところである。ところで、終戦後の韓国(南鮮)では、その親族関係等を規律する法令としては、終戦前に存した朝鮮民事令第十一条の如き成文の法令が未だ施行せられており、同条によると韓国人の親族関係等は同国の慣習によるのであつて、その慣習によると、母方の再従兄弟は親族の範囲から除外されているところである(法務省刑事局刑事第九三九一号、昭和二九、四、九附法務省刑事局長回答参照)。すると、被告人は、本件被害者申仁善とは、同居する母方の再従兄弟であり、従つて慣習上その六親等の血族には相違ないが、その同居の親族には当らないものといわなければならないから、本件につき刑法第二百四十四条第一項前段、第二百三十五条を適用し、被告人に対し刑の免除を言渡した原判決には、法令の適用を誤つた違法があり、これが判決に影響を及ぼすことが明らかであるから論旨は理由がある。原判決は破棄を免れない。