大判例

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大阪高等裁判所 昭和29年(ム)1号 判決

再審被告訴訟代理人は主文と同旨の判決を求め答弁として再審原告の本訴に於て取消を求める判決が確定するに至る迄の事実関係が再審原告主張の通りであることは之を認めるも其の余の再審原告主張の事実は全部否認する(一)仮に若し再審原告の主張する如く本件控訴を申立てた再審原告の訴訟代理人に対する委任状が偽造であり従つて無効であるとすれば第一審判決は控訴の申立なくして確定したこととなる即ち第一審に於ては再審原告(本訴被告)に訴訟代理人がなかつたもので其の判決正本は適法に再審原告本人に送達されたのであるから控訴申立が無効であれば第一審判決は既に確定したものである。而も本件控訴判決は再審原告の為に利益に第一審判決を変更して居るのであるから本件控訴の訴訟代理委任が無効であるとの事由が認められても控訴がなかつたことになる丈で第一審判決の確定力を失はないから再審の訴は再審原告にとり何等の利益もない(二)又再審原告は本件控訴判決の証拠となつた本件約束手形が偽造のものであると云うが之に付ては罰すべき行為に付有罪の判決が確定したときに限り再審の訴を提起し得べきものであることは民事訴訟法第四百二十条第二項に明定する通りである。然るに本件約束手形の偽造に付何人も有罪の判決を受け其の判決が確定したこともないから本件再審の訴は要件を欠き不適法である。以上の理由により本件再審の申立は却下を免れないと述べた。

三、理  由

本件当事者間の大阪地方裁判所昭和二十六年(ワ)第一四一四号約束手形金請求事件に付同裁判所が昭和二十六年七月十五日言渡した再審被告(本訴原告)勝訴の欠席判決に対し再審原告(本訴被告)の訴訟代理人より当裁判所に控訴した結果当庁昭和二十八年(ネ)第八〇六号事件として繋属し当裁判所が昭和二十八年六月二十六日第一審判決を変更して言渡した判決に対し再審原告の訴訟代理人より最高裁判所に上告し昭和二十八年十一月十九日上告棄却の判決が言渡され右控訴判決が確定したことは当事者間に争のないところである。

そこで先づ再審原告主張の(一)の訴訟代理権欠缺に基づく再審請求につき按ずるに、凡そ再審の訴は確定の終局判決について法定の再審事由の存在することを理由としてその判決を取消し訴訟をその不服ある判決前の原状に復して弁論並に裁判をなすことを求める訴であるから、本件のような確定せる控訴判決に対する再審申立が適法であるためには再審を申立てられた控訴裁判所において不服ある確定判決を取消した上更にその本案訴訟につき再度審判することのできる場合であることを要するのは当然と謂はぬばならぬ。蓋しかような取消後の本案に対する審判のできない場合には再審の訴はその目的を達することができなくなるからである。然るにもし再審原告主張のように右訴訟の控訴審において控訴人たる再審原告のための弁護士立入庄司に対する訴訟代理委任状が偽造であり従て控訴人の訴訟代理が無効であるとすれば、本件記録上明かなように、本件控訴申立は右訴訟代理委任状を添付した右訴訟代理人立入庄司名義の控訴状を以て為されたものであるから、右控訴申立は無権代理人による行為で当然その効力はない。

而して他面右訴訟の第一審判決正本は既に昭和二十六年七月二十八日再審原告(本訴被告)代表者本人に送達されていることは記録上明白であるから右第一審判決は控訴期間の満了とともに確定し、控訴審たる当裁判所に対する移審の効力が発生しなかつたことになるから、たとえ、当裁判所において訴訟代理権欠缺による再審申立に基づき不服ある右確定判決の取消をなすとしても本案訴訟事件について再び弁論及び裁判をなす余地も存しないことゝなるのは明かである。従つてかように再審の申立の事由が訴訟代理権の欠缺理由とする場合においても恰かもそのためにその審級の審判を妨げる結果となるようなときは再審申立は自体失当のものと云うべきである。それゆゑ再審原告主張の(一)の事由に基づく再審申立は不適法たるを免れない。

次で再審原告主張の(二)の再審事由に付考察するに原判決の証拠となつた約束手形が偽造であつたことを再審事由として再審申立をする場合には同時に該手形偽造に付有罪判決の確定したこと又は証拠欠缺以外の理由により有罪の確定判決を得ることが出来なかつたことを併せて再審事由としなければならないことは民事訴訟法第四百二十条第一項第六号第二項の規定に徴し明かである。然るに再審原告は此の点の再審事由に付何等の主張をも為さないから単に右手形が偽造であつたことのみを再審事由とする再審請求も亦不適法と謂はねばならない。

依て本件再審の訴は不適法として之を却下すべきものとし民事訴訟法第四百二十三条、第三百八十三条第八十九条を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 朝山二郎 沢井種雄 前川透)

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