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大阪高等裁判所 昭和30年(く)17号 決定 1955年8月10日

本籍 大阪府○○郡○○町大字○○○○番地

住居 大阪市○区○○町○丁目○○番地

少年 中学生 山田英一(仮名) 昭和十五年十二月二十一日生

抗告人 法定代理人親権者 父

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告申立書には、頭書の決定に対し不服があるから抗告の申告をすると記載してあるだけで、いかなる点に不服があるのか趣旨不明であるが、記録を調査すると、少年は、すでに窃盗罪により数回中央児童相談所や白鳥学園、修徳学園等に収容されたが、いずれも逃走し、昭和三十年一月末頃、○瀬○太○と共謀して、地蔵尊のさい銭箱からさい銭約二千円を窃取し、同年二月十六日大阪家庭裁判所において、保護観察処分に付せられ、在宅保護中、原決定摘示のとおり、同年三月二十日頃から、同年四月九日頃までの間十二回にわたり、単独又は○瀬○太郎や○岡○明と共謀して他家に侵入し、金品を窃取したものであつて、少年がその主動的地位にあり、犯行の手口も次第に悪質化していて、改悛の情がないこと、少年は、知能が低く、かつ貧困の家庭に育ち、保護者に監護能力がないと思われるので、原裁判所が重ねて在宅保護とせず、少年を初等少年院に送致する旨の決定をしたのは相当である。もとより少年の保護処分は少年を個別的に観察して各適当する処分をなすべきものであるから、少年の共犯者に対する処分の如きは本件に影響がない。その他記録を精査しても、原決定には、法令の違反、重大な事実の誤認又は処分の著しい不当等の事由がないから、本件抗告は理由がない。

よつて、少年法第三十三条、第一項、少年審判規則第五十条により主文のとおり決定する。

(裁判長判事 松本圭三 判事 山崎薫 判事 西尾貢一)

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