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大阪高等裁判所 昭和31年(ラ)223号 決定 1957年3月27日

抗告人 山田カネ(仮名)

相手方 遠藤明(仮名)

広井君子(仮名)

中野誠一(仮名)

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は、抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の要旨は、原審判では、相手方遠藤明、その父遠藤明太郎の月収額が過少に認定されている。しかも、明太郎の家族は親子四人で、その生活は、明太郎の収入によつて十分維持され、相手方明からの扶養を必要とするわけでないから、相手方明には抗告人を扶養すべき十分の余裕があり、原審判認定の扶養料の金額は、少額に過ぎ、失当である。さらに、相手方広井君子、同中野誠一に対する抗告人の扶養の申立を却下したのは、失当であるから、本件抗告に及んだ次第であるというにある。

本件記録に現われた調査官補の調査の結果によると、抗告人は、年齢五六才かつ病弱のため、他家に住込女中として、雇われても、永続きせず、勤務先を転々し、扶養を要する状況にあることは認められるが、実子たる相手方遠藤明及びその父遠藤明太郎の収入が、抗告人主張の如く、原審判で認定された金額より多額であることを認めしめるに足る的確な資料がない。しかして相手方明は、父明太郎、父の後妻雪子、その間の異母妹則子(昭和一九年九月○○日生)、里子(昭和二三年一一月○○日生)と同居し、同人等の生活は、明の収入月約一三、〇〇〇円、父の収入月一三、〇〇〇円ないし一五、〇〇〇円で維持されているのであるから、相手方明に、抗告人主張のような経済的余裕があるものとは考えられない。従つて相手方明の抗告人に対する既往の扶養料を増額し、昭和三一年七月末日までの分金六、〇〇〇円及び同年八月一日以降月金一、〇〇〇円宛の支払を命じた原審判を以て、あながち、抗告人主張の如く、寡少に過ぎ不当であるとすることはできない。

さらに、前記調査の結果によると、相手方広井君子、同中野誠一は、抗告人の姪または甥であつて、その間に当然の扶養義務がないのみならず、同人等の資産収入関係をみるに、抗告人を扶養するに足る余裕あるものとはいい難く、しかも右親族關係を除いて、抗告人との間に、扶養義務の設定を肯定するに足る特別の事情があるとは思われないから、抗告人の同人等に対する扶養の申立を却下した原審判は、相当であるといわなければならない。

よつて、本件抗告は、これを棄却すべきものとし、抗告費用の負担につき民訴法第八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 吉村正道 判事 金田宇佐夫 判事 鈴木敏夫)

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