大阪高等裁判所 昭和32年(ネ)1178号 判決 1959年1月22日
控訴人 藤重貞夫 外一名
被控訴人 日本輸送機株式会社
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
控訴人らは、「原判決を取り消す。被控訴人は控訴人らに対し原判決添付別紙のとおりの広告を掲載せよ。被控訴人は控訴人らに対し各五〇〇、〇〇〇円及びこれに対する昭和三〇年八月四日から支払ずみまで年五分の割合の金額を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文と同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張は、
控訴人らの方で、
原審原告藤重初治郎は、昭和三〇年九月三日死亡しその妻アヤノ、二男貞夫、長女八重子、三男不二夫及び四男治夫が共同相続したので、本件実用新案権と被控訴人の本件不法行為によつて生じた損害賠償債権とをも共同相続したが、同月末右共同相続人は協議のうえ遺産を分割した結果控訴人藤重貞夫が本件実用新案権と損害賠償債権とを取得した。
被控訴人が(原審において控訴人らが主張したように)作成したカタログ(甲第一号証)の作成及び配布行為は、実用新案法六条二項にいう「業トシテ……拡布スル」に該当する。被控訴人作成のカタログには、控訴人藤重貞夫が実用新案権を有する本件輸送機四種の写真と同一の写真を掲載しており、カタログの配布はそれに掲載された製品の宣伝と買受申込の誘引にほかならないから、これによつて被控訴人は本件輸送機四種と同一のものを現実に製作したものと推定せざるを得ない。
仮にそうでないとしても、実用新案法二七条一項一号・二号にいう「拡布」とは、現実に製作された物品を事実上第三者に交付する行為をいうのみならず、当該物品の写真を掲載したカタログを作成して第三者に頒布するときは、第三者は当該物品がそのカタログを作成した者によつて現実に製作され、かつそれをカタログ作成者が写真に撮つたうえカタログにこれを掲載したものと信ずるのが当然であるから、たとえ当該物品がカタログ作成者によつて製作されていないとしても、そのカタログの頒布行為は現実に当該物品を製作し、かつ流通過程におくかあるいはおいたと同一の効果を生ぜしめるゆえに、これをもつて「拡布」というべきである。
仮にそうでないとしても、被控訴人は控訴人会社が製作した本件輸送機四種を写真に撮影して作成したカタログ(甲第二号証)から、その写真をひよう窃したうえそのカタログ(甲第一号証)を作成し、あたかも被控訴人が自ら当該輸送機四種を製作しているように装つて、これを頒布したのであるから、被控訴人と競争関係にある控訴人会社の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布したものであり、被控訴人の右行為は不正競争防止法一条六号に違反するものにほかならない。
被控訴人の以上の不法行為によつて控訴人会社の前示輸送機の売上が減少したことはいうまでもないが、これがため控訴人会社は従来その専有権を有するものと宣伝して来た製品が被控訴人の製品としてそのカタログに登載されたため得意先に対し面目を失し、社会的信用を失い、かつ名誉を毀損せられた。と述べ、
被控訴人の方で、
原審原告藤重初治郎が昭和三〇年九月三日死亡し控訴人藤重貞夫ほか四名が共同相続をし、右共同相続人らが同月末協議のうえその遺産を分割した結果控訴人藤重貞夫が本件実用新案権を取得したことは認めるが、控訴人ら主張の初治郎の謝罪広告請求権は一身専属権であるから控訴人藤重貞夫はこれを相続取得することはできないものである。
実用新案は物品の形状、構造または組合せのうちいずれか一つに係る実用ある新規の工業的考案であつて、実用新案の範囲は、その登録請求の範囲たる物品の形状に係る型、物品の構造に係る型または物品の組合せに係る型のうちのいずれか一つの型にかぎられている(実用新案法一条、昭和三二年一月二二日改正前の同法施行規則二条三項)。控訴人ら主張の登録番号第四一七八八二号、同第四一〇八二七号の各実用新案権の登録請求の範囲は、登録番号第三四五三〇一号、第二七九七七八号のそれと同様、いずれも物品の「構造」にかぎられ物品の「形状」ではないから、その実用新案の範囲も物品の構造に係る工業的考案の表現形態たる型にかぎられているのである。したがつて右実用新案権登録第四一七八八二号を用いた特許不二式ローダー、右実用新案権登録第四一〇八二七号を用いた特許不二式ドラム罐ローダーのそれぞれの形状そのものも、右各実用新案の範囲に属しないのである。
被控訴人作成にかかるカタログ(甲第一号証)には、控訴人会社の営業上の信用を害するような虚偽の事実は掲載されておらず、被控訴人はそのような虚偽の事実を陳述し、または流布したことはないと述べたほか、いずれも原判決事実記載と同一(ただし、原判決二枚目表終りから三行目に「写集」とあるのを「写真」と訂正する。)であるから、これを引用する。
当事者双方の証拠の提出援用認否は、
控訴人らの方で、甲第一〇号証を提出し、原審において提出した検甲第一号証の一のうち修正前のものを検甲第一号証の一の甲、その修正したものを検甲第一号証の一の乙とし、検甲第一号証の一の甲と乙とは特許不二式ドラム罐ローダー、検甲第一号証の二は特許不二式ローダー、検甲第一号証の三はダブルチエーンコンベヤー、検甲第一号証の四は特許不二式梱包物積揚機の写真であつて甲第二号証(カタログ)中のそれぞれの写真の原図であると述べ、当審証人早内利実の証言を援用し、
被控訴人の方で、甲第一〇号証の成立、検甲第一号証の一の甲、乙、同号証の二から四までが控訴人ら主張のような写真であるか否かは不知と述べたほか、いずれも原判決事実記載と同一であるから、これを引用する。
理由
被控訴人会社が輸送機械の製造販売を業とする会社であること、被控訴人会社が昭和三〇年一月頃、「ニチユコンベヤーフオトグラフ」なる表題のカタログ(甲第一号証)を作成しこれを得意先に頒布したこと、亡藤重初治郎がその考案に係る実用新案権(1) 登録番号第四一〇八二七号、(2) 第三四五三〇一号、(3) 第二七九七七八号、(4) 第四一七八八二号を取得したが同人が昭和三〇年九月三日死亡しその遺産分割によつて控訴人藤重貞夫が本件実用新案権(1) から(4) までを取得したこと、控訴人会社製作に係る(イ)特許不二式ドラム罐ローダーが(1) から(3) までの実用新案権を用い、(ロ)同特許不二式梱包物積揚機が(2) 、(3) の実用新案権を用い、(ハ)同特許不二式ローダーが(4) 、(2) 、(3) の実用新案権を用い、(ニ)同ダブルチエーンコンベヤーが(2) 、(3) の実用新案権を用いて製作されていることは当事者間に争がなく、控訴人会社の製作に係る前示(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の機械四種の写真が控訴人会社作成のカタログ(甲第二号証)に掲載されておりその各写真が被控訴人会社作成のカタログ(甲第一号証)中のそれに類似していることは被控訴人の自認するところである。
控訴人らは、被控訴人は前示(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の機械を製作して前示(1) から(4) までの実用新案権及びその実施権を侵害したと主張し、被控訴人は(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の機械の製作はその外形のみが(1) から(4) までの実用新案と同一または類似するに止まりその実用新案権の侵害にあたらないと主張するので考えてみる(被控訴人がこれを製作しているか否かについては後に考えてみる)に、成立に争のない甲第二から第七号証まで、弁論の全趣旨によつて真正に成立したものと認められる乙第一号証から第四号証まで、原審証人早内利実(後記信用できない部分を除く。)、平賀猛、吉川一美の各証言によると、前示(1) の実用新案権(登録第四一〇八二七号)の登録請求の範囲は、その実用新案公報(甲第四号証)掲載の「図面に示すごとく無端連錯を掛懸する鎖輪を軸架せる枠体の両端部に受渡板片の一端辺を軸で擺動自在に枢着せしめ上端部の受渡板片は軸の周囲に数多の通孔を開穿しピンを挿通して任意の傾斜角度に変更保持せしめた可動コンベヤーの構造」であり、(2) の実用新案権(登録第三四五三〇一号)の登録請求の範囲は、「図面に示すごとく(甲第五号証の図面参照)中空胴筒を廻転自在に軸支せる両端二個の固定管軸をそれぞれ内端に定着せる相対的二個の両腕枠間に数個の支軸を直接連結せしめて堅固なる一組の枠体を形成し該支軸を貫通せる二個の支持板間に電動機を挾持し吊持せる状態に取り付け、かつ該支軸を利用して中介歯車を遊転すべく支持せしめ、これに電動機の軸端歯車を齧合し、かつ中介歯車とともに回転する歯車を胴筒内周歯車に齧合せしめたる電動装置の構造」であり、(3) の実用新案権(登録第二七九七七八号)の登録請求の範囲は、「図面に示すごとく(甲第六号証の図面参照)、電動機及びこれに連係せる減速機構等を収容せる外轂筒をコンベヤーの回転胴に使用したるものにおいて前記外轂筒の周囲には直接鎖条を懸渡すべき歯環を固定して成るコンベヤー駆動用電動機の構造」であり、(4) の実用新案権(登録第四一七八八二号)の登録請求の範囲は、実用新案公報(甲第七号証)記載の「図面に示すごとく、数多の円板状鎖片を順次連結して無端連鎖を形成し両側の断面コ形枠内に運行せしめるようにしたローダーの構造」であるが、(イ)特許不二式ドラム罐ローダーは前示(1) の実用新案権(登録第四一〇八二七号)の前示図面に示された構造上の考案の形態的表現たる型を用いており、(ハ)の特許不二式ローダーは前示(4) の実用新案権(登録第四一七八八二号)の前示図面に示された構造上の考案の形態的表現たる型を用いておるが、前示(ロ)の特許不二式梱包物積揚機と(ニ)のダブルチエーンコンベヤーは、いずれも前示(2) と(3) との実用新案権をその構造の一部に用いているけれども、全体としては、前示(2) 、(3) の実用新案権の前示図面に示された構造上の考案の形態的表現たる型を用いていないこと、(ロ)の特許不二式梱包物積揚機と同一の外形を有する機械、(ニ)のダブルチエーンコンベヤーと同一の外形を有する機械は、必ずしも前示(2) 、(3) の実用新案権を用いなくても、他の機械を用いてこれを製作することが可能であることが認められる。前示証人早内利実の証言中右認定に反する部分は信用できない。したがつて(ロ)の特許不二式梱包物積揚機と(ニ)のダブルチエーンコンベヤーとは、それの全体としての外形の同一のまたは類似する機械は、他人がこれを製作しても、前示(2) 、(3) の実用新案権を用いないかぎり、右(2) 、(3) の実用新案権に抵触するものではないといわねばならない。被控訴人は、前示(イ)の特許式ドラム罐ローダー、(ハ)の特許不二式ローダーと同一の外形の機械を他人が製作しても、前示(1) 、(4) の実用新案権の登録請求の範囲は、その形状ではなく構造であるから(1) 、(4) の実用新案権の侵害とはならない旨主張し、(1) 、(4) の実用新案権の登録請求の範囲は、前記認定のようにその構造であるけれども、思うに形状ではなく構造に係る実用新案権は、その構造上の考案の表現形態として型たる具体的形体を保護するものであるから、構造上の考案たる実用新案の範囲の同一性ないし類似性を判定するには、常に当該実用新案の図面によつて示される構造上の考案の型(型は図面によつて決定される。)たる具体的形体とその作用効果(技術的効果)の全体にわたる総合的考察を必要とするものであつて、構造上の考案の具体的に表現せられる型と同一の外形を有するものは、構造上の考案に係る実用新案の範囲に属するものといわなければならない。前記認定のように(イ)の機械は(1) の実用新案権の、(ハ)の機械は(4) の実用新案権のそれぞれの前示図面に示された構造上の考案の表現形態たる型すなわち具体的形体とその外形を同じくするものであるから(イ)、(ハ)の機械はそれぞれ(1) 、(4) の実用新案権の範囲に属し、右機械の製作は右実用新案権を侵害するものであつて、被控訴人の右主張は採用できない。
控訴人らは、被控訴人が前示(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の機械と同一の外形、構造等を有する機械を製作したと主張するけれども、当審証人早内利実の証言中右主張にそう部分は信用できない。他に右主張を認め得べき証拠はない。もつとも成立に争のない甲第一、第二号証、原審証人早内利実の証言によつてその成立の認められる甲第八号証、同証言によつて前示(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の機械の写真であることの認められる検甲第一号証の一の甲・乙、同号証の二から四まで、原審及び当審証人早内利実、原審証人松永隆、鶴田友吉、長田重喜の各証言、原審鑑定人渡辺太一郎の鑑定の結果と被控訴人主張のようなカタログ(甲第一号証)の原図となつた絵図の存在を認め得べき証拠のないこととを総合すると、控訴人会社は前示(1) から(4) までの実用新案権につき実施の許諾を受け、それを用いて前示(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の機械を製作販売しているものであるが、控訴人会社は昭和二九年一月中前示(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の機械その他の写真を印刷掲載したカタログ(甲第二号証)を作成頒布したところ、被控訴人は昭和三〇年一月頃控訴人会社の前示カタログを入手し、これに掲載されている前示(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の機械の写真をさらに写真撮影の方法によつて勝手に復製してカタログ(甲第一号証)を作成したうえ自己の得意先に頒布していることが認められ、この事実によると、被控訴人は得意先に対し前示(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)と同一の機械につき製作ないし買受注文の申込の誘引をしたものと認められるけれども、前記認定のように被控訴人の前示カタログ中の(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の写真が自己の製作した現物の写真ではなく控訴人会社の製作した現物の写真を復製したものであることと弁論の全趣旨とによると、被控訴人は前示(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の機械と同一ないし類似の物を製作していないものと認められるから、被控訴人の前示カタログ(甲第一号証)の頒布の事実をもつて被控訴人の前示機械の製作の事実を推認することはできない。控訴人らの右主張は採るを得ない。
控訴人らは、被控訴人の前示カタログ(甲第一号証)の頒布は、実用新案法二七条にいう「拡布」にあたると主張し、カタログの頒布はそれに記載されている物品の製作ないし買受注文の申込の誘引であつて、第三者としては当該カタログ頒布者がその物品を製作販売しているものと信ずるのが通常であろうけれども、実用新案権は物品に関する工業的考案を実施過程として現実に有形化して物品を製作することが基本的権利であり、実用新案権の他の内容である使用販売拡布の権利は現実に製作された物品について収益過程として利用されるものであつて、この取益過程の権利も現実に製作された物品が存在することが前提となつている。したがつて、同法条にいう「拡布」とは当該物品自体の輸入、展示、陳列、第三者に対する交付等実用新案権の収益過程におく行為をいうのであつて、現実に製作された物品自体の存在しない製作ないし買受注文の申込の誘引はこれに該当しないものと解するのが相当である。してみると、被控訴人が前示(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)と同一ないし類似の機械を製作、拡布したことを前提とする控訴人らの主張は、その余の点について判断するまでもなく理由がないといわなければならない。
控訴人らは、被控訴人は前示カタログ(甲第一号証)の頒布によつて競争関係にある控訴人会社の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布したと主張するので考えてみると、前記認定のように被控訴人のカタログ(甲第一号証)は控訴人会社のカタログ中の前示(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の機械の印刷写真を被控訴人が勝手に復製して作成したものであつて、その復製行為自体は控訴人会社の営業上の信用を害する虚偽の事実ではなく、またたとえ当該カタログの頒布によつて第三者が前示(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の機械と同一のものを被控訴人が製作販売するものと思つたとしても、あるいは被控訴人が第三者に対し自己が前示機械を製作販売しているように誤信されたとしても、これによつて第三者に対し控訴人会社の従来その製品についてした宣伝を虚偽のものと信ずるに至らしめたことを確認するに足りる証拠はないから、そのことだけでは、控訴人会社の営業上の信用を害するものということはできない。要するに、前示カタログ(甲第一号証)の頒布は、被控訴人の前示(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の機械と同一の物の製作ないし買受注文の申込の誘引にすぎないから、それは控訴人会社またはその製品に対する営業上の社会的評価を低下せしめてその信用を害するものではないというほかはない。当審証人早内利実の証言によつてその成立の認められる甲第一〇号証、同証言によると、控訴人会社の昭和三〇年七月から昭和三三年六月までの前示(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の機械の売上高は、昭和二九年五月から昭和三〇年六月までのそれより減少していることが認められるけれども、その減少は被控訴人の前示カタログ頒布によるものとは認められない。前示証人早内利実の証言中その減少は被控訴人が前示カタログを頒布したことによる旨の部分は信用できない。けだし被控訴人が前示(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の機械と同一の物を製作販売したならば、それだけ控訴人会社に対する前示機械の需要が減少するかも知れないが、前記認定のように被控訴人が前示機械と同一の物を製作販売していない以上、単なるそれの申込の誘引のみによつて控訴人会社に対するその需要が減少するとは考えられないからである。とすると、前示カタログの頒布によつて控訴人会社の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布したとすることを前提とする控訴人らの主張は、その余の点について判断するまでもなく理由がないものといわねばならない。
控訴人らは、被控訴人が前示カタログを頒布することにより、控訴人藤重は実用新案権者として専有する権利を侵害せられ著しくその名誉を傷けられ、控訴人会社は多年使用者の愛顧を受けて来た他社の追従を許さない独特の地位を疑われ面目を失し社会的信用を失いかつ名誉を毀損されたと主張するので考えてみるに、前段認定のように被控訴人はカタログ頒布によつて控訴人会社の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布したものでなく、また控訴人会社の製品や控訴人会社に対し誹謗したものでない。さらに、被控訴人が控訴人会社製品の劣悪な類似品を現に製作販売したこと、第三者に対し控訴人会社の従来その製品についてして来た宣伝を虚偽のものと信ずるに至らしめたことについてはこれを確認するに足りる証拠はないから、控訴人らの右主張は、その余の点について判断するまでもなく失当なことが明らかである。
そうすると、右と同趣旨の原判決は結局相当であつて本件控訴は理由がないから民訴法三八四条八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 熊野啓五郎 畠山成伸 山内敏彦)