大阪高等裁判所 昭和32年(ラ)132号 決定 1957年7月27日
抗告人 吉井一夫
相手方 日本電信電話公社
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
本件抗告の理由は別紙記載のとおりである。
然しながら、訴訟当事者が当該訴訟遂行の必要上裁判所に出頭するため支弁した旅費が日当と共に訴訟費用の範囲に属することは訴訟費用法第一条、第一一条、第一三条、第一五条の規定に照して疑いない。而して大阪市に居住するものが市内間を往来するのに一般に徒歩によらず、市電、市バス等の交通機関を利用していることは常識であり、現今の大都市生活の実態からみてもこれを以つて不必要なぜい沢費と解しえないから、反証のない限り原決定が相手方の出頭旅費として市電、往復電車賃二〇円(この額は現在大阪市内における交通機関の利用料金中の最低額である。)をその出頭日当と別に訴訟費用額に計上したことには何等の不当なく、抗告人の所論の如く、大阪市内居住者の出頭者の場合は市電電車賃は出頭日当中に包含されるものでこれと別個に訴訟費用として認められるべきでないとなすべき法律上の根拠がない。その他記録を調査するも原決定にはこれを取消すべき違法の点が存しないので、本件抗告を棄却し主文のとおり決定する。
(裁判官 田中正雄 松本昌三 乾久治)
抗告理由書
一、原決定書添付の計算書記載の金額中大阪市電、電車賃往復二十円又は二十五円の計上が随所に見受けられるが之は訴訟費用と認めるべきではない、裁判所は大阪市内に在り市内に住居を有する原告(被控訴人)が出頭する場合は含まないものと思う、弁論期日であろうが書類の提出であろうが必ず出頭すれば出頭日当を請求し得る以上此の出頭日当中に市電電車賃は包含されるのが妥当と信ずる、従つて計算書中市電電車賃として計上されている左記金額は失当として許容さるべきでない
記
第一審の分
昭和二九年 五月三一日 訴状提出電車賃 二〇円
三〇、 一、一三 弁論期日出頭電車賃 二〇円
三〇、 二、二二 〃 二〇円
三〇、 三、二九 〃 二〇円
三〇、 四、三〇 〃 二〇円
三〇、 五、一一 証拠申出書提出〃 二〇円
三〇、 六、二五 弁論期日出頭 〃 二〇円
三〇、一〇、二五 〃 二〇円
第二審の分
昭和三一年 三月二九日 弁論期日出頭電車賃 二五円
三一、 五、 一 〃 二五円
三一、 七、 三 〃 二五円
三一、一二、一三 訴訟費用決定申立書提出電車賃 二五円
計 二六〇円