大阪高等裁判所 昭和32年(ラ)139号 決定 1957年7月04日
抗告人 佐田三郎(仮名)
主文
本件抗告を却下する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
抗告理由の要旨は、原決定は田村ヒロ、山本調治外二名の各審問の結果と永田調査官の調査報告の結果を綜合し、山本調治を山本新三の後見監督人として選任せられたいとする抗告人の申立を却下した。抗告人としては田中兵衛、仲田玲子の審問の結果を採用し右選任をせられたいというにある。
そこで按ずるに、家事審判法第一四条によると、家庭裁判所の行う審判に対しては最高裁判所の定めるところにより即時抗告のみをすることができることは明らかであるところ、家事審判規則第二五条によると、禁治産を宣告する場合において、法律により後見人となる者がないときは、家庭裁判所は申立によつて同時に後見人を選任しなければならないと規定し又同規則第二七条第二項によるも禁治産の宣告の申立を却下する審判に対しては即時抗告をすることができると規定するに反し、後見監督人選任の申立却下の審判については不服申立に関する規定がないのは、民法が後見監督人をもつて後見の必須の機関とせず、後見監督人については、指定後見監督人がない場合又は後見監督人の欠けた場合においてもこれを選任するのは、家庭裁判所がその必要があると認めたときに限るからである(民法第八四九条参照)。そして原決定によると、原裁判所は本件につき後見監督人を選任する必要を認めなかつたことが明らかであり、右決定に対しては抗告の申立をすることができないものと解するのが相当であるから、本件抗告を不適法として却下すべく、抗告費用は民事訴訟法第八九条を適用し抗告人をして負担せしむべきものとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 松本昌三 裁判官 乾久治 裁判官 小野田常太郎)