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大阪高等裁判所 昭和33年(ラ)21号 決定 1958年2月25日

抗告人 大内秀男(仮名)

相手方 松山庄典(仮名)

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告理由の要旨は、「抗告人は、生活能力薄くかなりの借財があり、毎月二、五〇〇円支払うのが精一杯で、親として尽力はしているが、零細業者で一ヶ月一二、〇〇〇円から最高二〇、〇〇〇円迄の収入で家族四人が生活している現状であるので、昭和四四年七月まで支払を続けることができるかどうかが心配される。抗告人は、相手方を扶養する義務があることは認めるが、相手方親権者の父母や弟に対しては扶養義務はなく、かつ、相手方及びその親権者の家の生活状態は抗告人より安定性が強く、現在日常生活に事欠かず、むしろはでなところが多い。即ち同家は近所の風評によれば所在の○○第一であり、田地約二町を所有している。以上の次第であるから、原審判を変更し、抗告人は相手方に対し、一ヶ月二、五〇〇円の割合による扶養料を支払えとの審判を求める。」というのである。

しかしながら、相手方と抗告人間の和歌山家庭裁判所昭和三二年家(イ)第九四号養育料請求家事調停事件記録中の家庭裁判所調査官橋本友広作成の調査報告書によると相手方親権者は、昭和三二年五月と六月和歌山○○○臨時作業員として勤務し日給二七〇円を得ていたが、同年六月末解雇され、その後は家事労働に従事しており自身の収入はないこと、抗告人は、○○館という旅館を経営して毎月五、〇〇〇円の扶養料を支払う能力を有することを認めることができ、右認定を覆えすに足る資料はない。もつとも右報告書によると、相手方親権者の父松山彦太は、田二反二畝一五歩、畑八反三畝一五歩、宅地一二六坪七合、建坪四一坪の家屋一棟を所有し、外に畑二反八畝八合を田崎秋松と共有していることを認めることができるが、松山彦太は相手方の祖父であつて、抗告人は相手方の父でありかつ相手方を扶養する資力を有するのであるから、原審が抗告人を相手方の扶養をなすべきものと定めたことは、民法第八七八条の規定に照し相当である。従つて抗告人は、相手方の祖父松山彦太に扶養の資力があるとしても相手方を扶養する義務を免れることはできない。そして、相手方は、昭和二四年七月○○日生で小児痲痺のため足が不自由であること(記録上明かである)、その他本件記録にあらわれた諸般の事情を考慮すると、抗告人は相手方に対しその生活費として抗告人の扶養能力の範囲内である一ヶ月四、〇〇〇円の割合による金員を支払う義務があるものと認めるを相当とする。従つて抗告人に対し、昭和三三年一月から相手方が成年に達する迄毎月末日四、〇〇〇円ずつ支払うべき旨命じた原審判は相当であつて、抗告人の主張は採用することができない。

その他記録を精査するも、原審判にはこれを取り消すべき瑕疵はなく、本件抗告は理由がないからこれを棄却すべきものとし、家事審判規則第一八条家事審判法第七条非訟事件手続法第二五条民事訴訟法第四一四条第三八四条第九五条第八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 態野啓五郎 裁判官 坂速雄 裁判官 岡野幸之助)

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