大阪高等裁判所 昭和34年(く)58号 決定 1959年11月10日
少年 M(昭一五・二・七生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告申立の要旨は、少年は先に医療少年院より特別少年院に移送せられたことがあるので、同じ少年院に二度も収容せられることは忍びがたいところであるから、むしろ検察官に送致し、刑の執行猶予の処分を受けたいと思う外に、非行事実中恐喝の点については恐喝の意思がなかつたのであるから、原審が少年を中等少年院に送致する旨の決定をしたのは不当であるというのである。
記録を検討すると、少年が和歌山家庭裁判所田辺支部において、先に昭和三〇年一一月八日恐喝、窃盗、暴行等約三〇回に亘る非行事実により医療少年院に送致せられ、昭和三二年四月二二日特別少年院河内少年院に移送収容せられ、昭和三三年三月一七日仮退院を許されたことは所論のとおりであるが、少年は仮退院後帰省し、父と共に土方、運材夫、日稼等に就労中昭和三四年七月父と争つて家出し、居町の不良青少年と交遊し再度本件恐喝、恐喝未遂等の非行に及んだことが明かであつて、非行事実について所論のような誤認があるとは思われないし、その他少年の資質、非行歴、交遊関係、保護者の保護能力等記録に現れた諸般の事情を綜合すると、少年の不良性癖を矯正するためにはなお収容保護を必要とするものと思われるので、原決定が少年を中等少年院に送致したのは相当であつて、本件抗告は理由がない。
よつて、少年法第三三条第一項を適用して主文のとおり決定をする。
(裁判長裁判官 小田春雄 裁判官 山崎寅之助 裁判官 竹中義郎)
別紙 抗告申立書
抗告申立人深海正照
抗告の趣旨
特別少年院送致決定を受けましたが、私は前に医療少年院から特別少年院に移送されておりますので、同じ少年院で二度も収容生活を送ることは私として実にしのびがたく、今度こそ直面目になろうと思いますのに、又特別少年院で悪いことを覚え皆んなに迷惑をかけるようになります
厚かましい事ですが、一層検察官送致になり執行猶予にでもして貰い度いと思います
傷害、恐喝等になつておりますが、傷害とて私からしかけた喧嘩でもありません、恐喝も何ら私は恐喝の意思がありません、後でお返しするつもりであつたので、恐喝と言われると私の立つ瀬がありません。