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大阪高等裁判所 昭和34年(ネ)1145号 判決 1962年9月20日

理由

被控訴人は、本件手形は、訴外アルプス薬品工業株式会社(以下訴外アルプスという。)振出にかかる金額を金五五〇、〇〇〇円、満期を同三二年一二月一五日とした約束手形の支払を担保するために、保証手形として振出されたものであるが、右被保証手形はその満期日に支払われているから、これにより被控訴人の本件手形金支払義務は消滅したところ、控訴人は右事実を熟知し、被控訴人を害することを知りながら本件手形を取得したものであるから、被控訴人は控訴人に対して本件手形金を支払う義務がないと抗争するので考えてみるに、証拠(書証)、訴訟の経過(省略)、及び、元来被保証手形と保証手形は相伴つて転々譲渡さるべきことが通常の状態であるといわねばならないのに、弁論の全趣旨及び証言により認められる、本件手形を控訴人が譲り受ける際、既に本件被保証手形が訴外柴田の手許に存しなかつた事実を考え合わせると、被控訴人が、同三二年七月二〇日頃、訴外アルプスが同日被控訴人に対し振り出した金額を金五五〇、〇〇〇円、満期を同年一二月一五日とした約束手形一通の割引を、訴外松田静夫を介して訴外柴田秀雄に依頼したので、訴外柴田において右手形を割引いたのであるが、その際、訴外松田の要求により、被控訴人が右割引手形の支払を保証するため本件手形を振出して訴外松田に交付し、同訴外人において、右趣旨を表示するため本件手形右肩欄外に「アルプス工業KK保証手形」と記載して、これを訴外柴田に交付し、爾来同訴外人においてこれを所持していたが、右被保証手形がその満期の翌日たる同年一二月一六日に支払われていたため同訴外人の手許になく、同訴外人が右事実を控訴人に説明したのにかかわらず、同月二〇日頃、控訴人において同訴外人から本件手形を敢えて譲り受けて持帰つたことが認められるから、控訴人は被控訴人を害するため本件手形を取得したものというべく、従つて、被控訴人は控訴人に対し、本件手形金を支払う義務がないといわれねばならない。

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