大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。
官報全文検索 KANPO.ORG
月額980円・今日から使える・メール通知機能・弁護士に必須
AD

大阪高等裁判所 昭和34年(ネ)1437号 判決 1960年4月27日

控訴人 合資会社大塚官治商店

訴訟代理人 川村寿三

被控訴人 株式会社三和銀行

訴訟代理人 貝出武夫

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」旨の判決を求め、被控訴代理人は主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張竝に証拠の提出、援用、認否は被控訴代理人において「控訴会社の営業目的が控訴人の主張するとおりであることはこれを認めるが、その余の抗弁事実は争う。」と述べた外は原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

理由

当裁判所の認定竝に判断は、左記のとおり補足する外は、原判決理由と同一であるから、ここにこれを引用する。

一般に手形行為は商人の営利活動の基本的手段であるから、会社の定款に定められた営業目的の範囲が如何なるものである場合においても、手形行為自体は会社の営利活動の手段として、当然にその能力範囲に属するものと解するを相当とするのであつて、このことは商法が何等会社の能力制限に関する一般規定を設けることなく、却つて商法第七八条第二項、第一四七条、第二六一条第三項を以て民法第四四条、第五四条の規定を会社に準用しているにかかわらず、民法第四三条については何等の準用規定を設けていないことからも当然に結論し得るところである。換言すれば、民法第四三条は、民法上の公益法人に限つて適用せらるべき規定であつて、営利法人たる会社にはその適用がないものと解し、会社については、法律が会社という法人形態を認めた独自の法理念に照らして、その能力範囲を定めることを相当とするのであつてかく解するときは、営利活動の基本的手段である手形行為が、会社の能力範囲に属するものとなすべきことは理の当然であるとしなければならぬ。のみならず合資会社大塚官治商店の営業目的として「製材、製函等竝にその販売の事業」を掲げ、次で「前記事業に附帯する一切の業務」と定めていることが当事者間に争のない本件において右定款の規定は、当然に手形行為をなすことを含むものとも解し得ることは、原判決理由に説示するとおりである。

よつて被控訴人の本訴請求を認容した原判決は正当であるから、本件控訴はこれを棄却すべく、民訴法第三八四条、第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中正雄 裁判官 沢井種雄 裁判官 河野春吉)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例