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大阪高等裁判所 昭和35年(く)43号 決定 1960年6月07日

少年 K(昭一七・二・三生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の要旨は、少年の今回の非行は、その一つは「さや付短刀ようのもの」の所持でこれは地廻りの連中から一時保管を頼まれたもの、他は窃盗で、前記の事件で鑑別所に留置中他の共犯少年の自白から判明し本少年もこれを認めているところである。調査官の話では少年は過去の罪を清算するため自ら少年院行きを希望しているとのことであるが、少年は人一倍親孝行で、兄弟姉妹に対し心根もやさしいものであり、その非行は父に死別し、適当な就職先もない一般朝鮮人子弟のおかれている運命的なものへの一時的反抗と貧しさ等からして悪友たちの誘惑に負けた一時的の非行であるから、何かの「きつかけ」があれば必ず更生し得る少年である。少年が進んで少年院行きを希望したとすれば、その反省自体が更生の端緒であり、良心の喚起である。今更少年院に送致の要はない。しかも実母は民生保護を受けている状態で少年なくしては到底生きてゆく望がない。原決定は調査不十分につき十分調査の上、原決定の取消を求めるため本抗告に及んだものであると言うのである。

よつて記録を精査し案ずるに、本件非行は原決定摘示のとおり昭和三十四年十一月十三日より昭和三十五年三月十一日までの前後十一回に亘る窃盗と、あいくち類似の刃物一挺の携帯であるが、少年は原決定も説示のとおりこれより先の昭和三十四年三月二十五日恐喝の非行により保護観察に付され在宅補導中その効なく同年十一月十三日本件非行の第一回目の窃盗に及んだが、なお更生を期し試験観察として昭和三十四年十二月十六日家庭裁判所調査官の観察に付されたところ、更生意欲乏しく家庭が生活困難であるにかかわらず家出し、安宿に泊り暴力団の丸○会に加入し、不良交友を歴ね昭和三十五年二月九日より本件第二回目以下の窃盗等に及んだものであることが認められる。少年の父は死亡し、母は保護指導の能力がない。これらの経過、環境に徴すると在宅補導では到底少年の更生は望めず、少年を施設に収容し矯正教育訓練を施す必要がある。原決定も十分調査した上での処分であることは記録上明らかで、中等少年院送致の原決定は相当である。

よつて本件抗告は理由なきものとして少年法第三三条第一項少年審判規則第五〇条により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 山本武 裁判官 三木良雄 裁判官 古川実)

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