大阪高等裁判所 昭和35年(く)67号 決定 1960年12月06日
少年 T(昭一六・八・一〇生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の理由は、原決定の処分は著しく不当であると主張し、傷害事件については被害者の挑発によるものであるが、すでに被害者に謝罪し、治療費を負担する旨の誓約をし一部履行して宥恕を得ており、又少年は初犯であるから窃盗事件の共犯者との処分の均衡もあり、又抗告申立人らにおいて従来の保護指導の不行届を深く反省し、家庭は決して不健全なものではなく、少年も向学心があり、高等学校課程の通信教育を受け、学業に励んでいるので、保護司の補導のもとに家庭において保護教導することは至難でないというのである。
よつて関係記録を精査し案ずるに、本件非行の原因、態様、回数、被害者に加えた傷害が治療二ヵ月を要する重傷であること、及び少年の非行性、殊に本少年は中学、高校時代より粗暴で交友が悪く、学業に励まず高校にては落第し、暴行事件を起し無期停学処分を受け、昭和三十四年七月、二学年の中途で止むなく退学するに至り、その後も不良交友を続け、昭和三十五年一月二十九日原裁判所において業務上過失傷害、暴行保護事件により審判を受けながら、反省改悟することなく僅か三ヵ月にして本件非行を繰り返し、家庭の保護能力も十分とはいえないから、所論の事由を参酌しても、最早や在宅補導によつては到底本少年の健全な育成を期待し得ない。従つて原決定の中等少年院送致の措置は相当であつて、本件抗告は理由がない。
よつて少年法第三十三条第一項少年審判規則第五十条により、主文のとおり決定する。
(裁判長判事 山本武 判事 三木良雄 判事 古川実)