大阪高等裁判所 昭和35年(ラ)110号 決定 1960年9月22日
抗告人 村田たき
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりであり、原審において却下された抗告人の申立は末尾記載のとおりである。
抗告人の主張は要するに、亡村田亀治と事実上婚姻したのは申立人であつて、妹きぬは同人と全く婚姻の意思もその事実も無かつたのであり、従つて明治三七年一〇月四日附婚姻届書に、きぬの名が記載されたのは全く記載を誤つたものであるから、本件各戸籍訂正の申立は許可せらるべきであるという。併しながら申立人の父滝田彦兵衛の除籍の謄本に原審における滝田きぬ、村田宗太郎、青田みさを、村田捨一及び申立人本人の各審問の結果を総合すると、右の当時申立人が滝田彦兵衛の法定の推定家督相続人であつたため、法律上右亀治と婚姻できなかつたので、妹きぬの名を使つて婚姻届をなすに至つたことが認められ、他に右婚姻届出の際申立人の名をきぬと誤記されたことを認めるべき何等の証拠も無いので、亀治ときぬとの婚姻の記載に錯誤のあつたことを理由として之を亀治と申立人との婚姻届として戸籍訂正を求める申立の失当であること明かである。而してその余の申立は、すべて右戸籍訂正の申立の許容されることを前提とするものであるから之亦許すべきでないこと明らかである。仍て抗告人の主張はすべて理由なく、その他記録を精査するも原審判には何等違法の廉が無いので本件抗告は理由なきものとして棄却するを相当と認め主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 加納実 裁判官 沢井種雄 裁判官 千葉実二)