大阪高等裁判所 昭和36年(う)124号 判決 1961年3月27日
被告人 李春男
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役二年に処する。
原審における未決勾留日数中二〇日を右本刑に算入する。
押収にかかる登山用ナイフ(革サツク入り)一挺(証第一号)はこれを没収する。
原審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
刑法第二二五条にいわゆる営利とは単に利益を得ることを意味するにとどまりその一回的たると継続的反覆的たるとを間はないものであり又営利の目的とは誘拐者が誘拐行為をする意思決定の動機をいい必ずしも誘拐行為自体により利益を得る場合にかぎらない。したがつて原判示第一の所為が営利誘拐に該らないとの論旨は法律を正解しないものである。
次に営利誘拐の行為と恐喝乃至恐喝未遂の行為の間に通例手段結果の関係があるとはいえないこと明らかであるから原判示第一の営利誘拐の行為と原判示第二の恐喝未遂の行為との間に事実上手段結果の関係があつたとしても牽連犯を以て論ずる余地なく原審が併合罪として処断したのは正当である。
(その余の判決理由は省略する。本件は量刑不当で破棄自判。)
(裁判官 児島謙二 畠山成伸 瞿曇)