大阪高等裁判所 昭和36年(く)59号 決定 1961年10月30日
少年 T(昭一七・八・八生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の理由は、これを要するに本件自動車三台の窃盗について原決定では申立人の単独犯行と認定されているけれども、右は申立人の虚偽の陳述に基くものであつて真実はNとの共同犯行にかかるものであつて事実に相違するから原決定の取消を求めるというのである。
よつて、本件少年保護事件記録及び少年調査記録を精査すると、申立人の司法警察職員に対する各供述調書(昭和三十六年八月二十二日附、同月二十三日附、同月二十四日附)によれば、申立人が昭和三十六年七月十六日堺市浜寺公園町附近路上で○○木○一所有の軽四輪自動車一台、同月二十一日大阪市生野区の空地で村○克○所有の普通四輪貨物自動車一台、同年八月三日大阪市阿倍野区の近映事務所前路上で○原○治所有の軽自動車一台をいずれも申立人単独で窃取した経緯が詳細に供述されており、その供述内容は何等不自然なところはなく十分信用し得るものと認められ、なお申立人が右各自動車を売却し又は売却しようとした相手方であるY、H、S、Oの司法警察職員に対する各供述調書を検討しても、申立人の本件自動車窃取の犯行がNなる者との共同犯行であることを認定するに足る何等の証拠もないから申立人の主張は採用の限りではなく、結局原決定のこの点に関する認定事実は洵に相当であつて、重大な事実の誤認は存在しない。そして本少年の生活状況について見ると両親に死別後は、義兄(実長姉の夫)の許に引取られていたが折合わずに家出し、転々と浮浪生活を繰返し、その間不良交友形成の素地を作るに至つているが、若年の実姉のみでは、相当程度進行した非行的傾向ある本少年に対する保護能力にも期待しがたいから、本少年の環境調整と性格矯正とのためには収容保護の措置も止むを得ないものと認められる。従つて原裁判所が少年を中等少年院に送致する旨を決定したことは、その処分が著しく不当とは認められない。
よつて少年法第三十三条第一項、少年審判規則第五十条に則り主文の通り決定する。
(裁判長裁判官 奥戸新三 裁判官 塩田宇三郎 裁判官 竹沢喜代治)