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大阪高等裁判所 昭和36年(ネ)1429号 1965年3月23日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人等の請求を棄却する。訴訟費用は被控訴人等の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用、認否は、次に付加訂正するほかは、原判決の事実欄に記載しあると同一であるから、これを引用する。

控訴代理人において

控訴人は遺産分割によつて取得した原判決添付別紙第一目録記載不動産のうち、和歌山市○○△△△番地田一反七畝二〇歩外九歩畦畔につき、被控訴人道子から借用した金二〇万円のために昭和三一年二月六日抵当権を設定し、その旨の登記手続を経た。そして、その一年後に、控訴人は同被控訴人に右借金を返済し、同人の同意を得て抵当権の抹消登記手続をした(乙第三、六号証)。この事実は被控訴人幸子も当時承知していた。そうすれば、被控訴人両名は、遺産分割協議書(乙第一号証)が正当に作成されたものであつて、控訴人が原判決添付別紙第一目録記載の土地建物を所有していることを承認していたものである。従つて、同目録記載の不動産が控訴人の所有である旨の登記は、いずれも事実に符合し、正当のものである。

と述べ、

被控訴代理人は、控訴人の右主張に対し、

右抵当権設定登記手続は、控訴人が独りでこれにあたり、被控訴人等は全くその手続に関与しなかつたし、その登記後も抵当権設定金円借用証書(乙第六号証)を手渡されただけで、その登記簿騰本を見せられることもなかつたので、被控訴人等は右乙第六号証記載の不動産の控訴人の持分について抵当権が設定されたものと解していた。

と述べた。

被控訴代理人は甲第一九号証を提出し、当審証人山形光男、米沢清の各証言、被控訴人西畑幸子、西畑道子各本人尋問の結果を援用し、乙第一一号証の一、二の成立は認めるが、第一二号証の一、二の成立は不知と述べ、控訴代理人は乙第一一号及び第一二号証の各一、二を提出し、当審証人大谷益ノ助、米沢耕一の各証言、当審の控訴本人尋問の結果を援用し、甲第一九号証の成立は認めると述べた。

原判決六枚目表二行目に「鶴岡国夫」とあるを「鶴見国夫」、同一〇枚目表二ないし三行目に「大谷益之助」とあるを「大谷益ノ助」、同三行目に「鶴岡富男」とあるを「鶴見富男」と各訂正する。

理由

一、当裁判所は、被控訴人等の控訴人に対する持分確認及び所有権取得登記の抹消登記手続を求める請求をいずれも正当と判断するが、その理由は、次のとおり付加するほかは、原判決の理由に記載のとおりであるから、これを引用する。

(一)  原判決一一枚目表七行目の「各本人尋問の結果」の次に「当審における証人米沢耕一の証言、控訴本人(一部)、被控訴本人両名各本人尋問の結果」、同一三枚目裏二行目の「各本人尋問の結果」の次に「当審における証人大谷益ノ助、控訴本人尋問の結果」、同一三枚目裏七行目の「被告西畑喜一(第一、二回)」の次に「当審の控訴本人」、同一四枚目表三行目の「各本人尋問の結果」の次に「当審における証人山形光男、米沢耕一の各証言、被控訴人等両名各本人尋問の結果」、同一四枚目裏一〇行目から一一行目にかけての「本人尋問の各結果」の次に「当審の控訴本人尋問の結果」、同一五枚目裏四行目から五行目にかけての「本人尋問の各結果」の次に「成立に争ない乙第一一号証の一、二、当審における証人山形光男、米沢耕一の各証言、被控訴人等両名各本人尋問の結果」、同一七枚目裏三行目の「証人米沢耕一」の次に「(原審)」、同一七枚目裏六行目の「本人尋問の結果」の次に「当審の控訴本人尋問の結果」を各加える。

(二)  原判決の理由欄中「大谷益之助」とあるをいずれも「大谷益ノ助」、原判決一一枚目裏九行目に「養子」とあるを「養子縁組」、同一六枚目表五行目に「激加」とあるを「激化」、同一〇行目に「攻繋」とあるを「攻撃」、同一一行目に「心神」とあるを「失神」、同一八枚目裏二行目に「所有者の」とあるを「所有者と」と各改める。

(三)  控訴人が当審においてなした主張(事実欄記載の主張)について判断する。

控訴人主張のとおり抵当権設定の登記がされ、そして抹消されたことは被控訴人等の明らかに争わないところであるから、これを自白したものとみなす。ところで、当審の被控訴人等両名各本人尋問の結果、原審の被控訴人西畑幸子(第一回)、面畑道子(第一、二回)各本人尋問の結果を総合すれば、被控訴人道子は、和歌山市○○△△△番地田一反七畝二〇歩外九歩畦畔が当時控訴人被控訴人両名及び西畑書一等四人の共有名義に登記されていることについて疑いを懐かなかつたので、控訴人の右不動産に対する持分権について抵当権を設定する約束で、昭和三一年二月六日控訴人に対して金二〇万円を貸与えたものであること、しかるに、当時既に右不動産が控訴人の単独所有名義に登記されていて、この所有権について抵当権設定登記がなされ、そして抹消されたものであることを被控訴人等は知らなかつたことを認めることができる。この認定に反する当審の控訴本人、原審の控訴本人(第一、三回)尋問の各結果は措信しない。二、そうすれば、被控訴人等の請求を認容した原判決は正当であつて、本件控訴は理由がないから棄却すべく、民事訴訟法八九条九五条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 安部覚 裁判官 山田鷹夫 鈴木重信)

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