大阪高等裁判所 昭和36年(ネ)185号 判決 1962年6月11日
控訴人 大日化学産業株式会社
右代表者 西浦文次
右代理人 中井弥六
被控訴人 有限会社 丸一商会
右代表者 武智好太郎
右代理人 大原篤
北悦雄
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
≪省略≫
理由
当裁判所は被控訴人の本訴請求は正当としてこれを認容すべきものと判断した。
その理由は催告をしないでなした被控訴人の本件売買契約解除の意思表示の効力について後記の如く補充する外すべて原判決のとおり(但し控訴人の相殺の抗弁に関する部分を除く。)であるから、これをここに引用する。
被控訴人は本件売買契約解除の意思表示をなすに当り、予め履行の催告をなしていないが、原審における証人穂積太一郎の証言及び被控訴会社代表者本人の供述並びに控訴会社代表者本人の供述の一部を綜合すると、フラフープは昭和三三年一〇月二〇日頃から流行し始め同年一一月末頃には流行が下火となつた一時的流行品で、それ故に被控訴人としても控訴人に対して控訴人がその当時住友ベークライトに毎日二、〇〇〇本のフラフープを納品していると称していた分の内から毎日五〇〇本位でも抜いて被控訴人に廻してくれるように希望し、結局同年一一月一七日から同月二四日までは最低二〇〇本の納品あることを期待し、控訴人に於てもその程度の納品をなすことを約束したが、約定の同年一一月一七日になつてもフラフープ一本の納品すらなされず、かつ又当日なされた被控訴人の問合せの電話に対しても控訴人方では誰も応答に出なかつたので被控訴人は不信を抱き調査したところ、そもそも控訴会社代表者が先に言明していた住友ベークライトに毎日二、〇〇〇本のフラフープを納品している事実はないことが判明したこと、又控訴人は当時フラフープ製造の機械を他に注文中でフラフープ一本の製造にも入らず、而して、被控訴人に対して約定の数量のフラフープを継続して納品する能力とこれを納品せんとする誠意とがなかつたことが認められる。(右認定に反する原審における控訴会社代表者本人の供述は採用できない。)
以上のように、一時的流行品でその納期とその数量とが重要な要素で、しかも継続的な取引関係にある商人間の売買契約において、履行遅滞の責のある控訴人に重大なる背信的言動ないし違約がある場合は買主たる被控訴人は何等履行の催告をなすことなくして契約を解除することを得るものと解するのが相当で、従つて被控訴人のなした本件売買契約解除の意思表示は有効である。
よつて原判決は相当であるから民事訴訟法第三八四条第一項に則り本件控訴はこれを棄却すべく、訴訟費用の負担につき同法第九五条第八九条を適用して主文の通り判決する。
(裁判長裁判官 田中正雄 裁判官 宅間達彦 井上三郎)