大阪高等裁判所 昭和36年(ラ)208号 決定 1962年1月13日
決 定
大阪市阿倍野区播磨町西一丁目三二
抗告人
弓場長三郎
右訴訟代理人弁護士
弓場晴男
大阪市住吉区住吉公団東長居団地五〇一〇七
相手方
伏木政光
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
抗告人主張の抗告理由は別紙のとおりである。
本件上告受理通知書の送達報告書によれば、右通知書を昭和三六年五月五日送達者弓場晴男の同居人藤井正義に交付送達した旨の記載があるが、証人灘尾理一の証言及び灘尾理一、寺前郁子の各陳述書によれば、昭和三六年五月五日は休日であり、受送達者弁護士弓場晴男の法律事務所(大阪市北区樋上町三八番地所在藤ビル二階二一号室)は閉じられていたので、藤ビルの管理人灘尾理一が右通知書を受領し、送達報告書に藤ビル経営者藤井正胤の長男藤井正義名義の記名捺印をなし、翌日弓場晴男の事務員寺前郁子に右通知書を交付した事実を認め得る。
しかし、証人灘尾理一の証言によれば、藤ビル管理人灘尾理一は、従来、藤ビル所在の弁護士弓場晴男法律事務所に同弁護士及び事務員等不在の際、同弁護士宛の書留等の特殊郵便物を受領していたが、これに対し同弁護士より異議を述べられたことがなかつた事実を認め得る。
ところで、ビル管理人が、従来、同ビル所在の弁護士法律事務所に事務員等が不在の際、同弁護士宛の書留等の特殊郵便物を受領し、これに対し同弁護士より異議を述べられたことがなかつた場合、同弁護士より、ビル管理人に対し、同弁護士事務員等不在の際の送達受領の代理権限の授与があつたものと認めるのを相当とする。
したがつて、本件上告受理通知書は昭和三六年五月五日受送達者弓場晴男に送達がなされたものと認められる。
よつて、抗告人が昭和三六年六月二六日提出した上告理由書を期間経過後に提出されたものとして、上告を却下した原決定は、正当であり、本件抗告を棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり決定する。
昭和三七年一月一三日
大阪高等裁判所第八民事部
裁判長裁判官 石 井 末 一
裁判官 小 西 勝
裁判官 岩 本 正 彦
抗告理由
一、原決定は上告代理人の上告理由書が所定の五拾日を経過後に提出されたものであるとして民事訴訟法第九九条第壱項第弐号に則り上告を却下しているのである然し乍ら次項以下に述べる様に上告代理人は上告理由書を所定の五拾日以内に提出しているのであるから、原決定は取消さるべきものである。
二、即ち上告代理人は昭和参拾六年五月六日に上告受理通知を受領しているのであつて原決定の判示する如く五月五日ではない尤も書類送達証明書によると大阪中央郵便局集配人松川文規が昭和参拾六年五月五日拾時参拾分に大阪市北区樋上町三十八番地に送達したことになつて居り書類受領者として藤井正義が記名捺印している而して右藤井正義を同居人(恐らく受送達者上告代理人の同居人と言う意味であろう)欄に記名しているが右藤井は上告代理人の同居人でなければ代理人でもなく上告代理人とは全く無関係者である。
三、上告代理人は送達場所たる大阪市北区樋上町三十八番地所在藤ビル二階二十一号室を法律事務所として日曜日及休日を除き昼間執務しているが藤井正義は同ビル経営者の長男である而して右集配人松川が本件書類を送達した日は五月五日であつて休日であり上告代理人及事務員は終日出勤せず同事務所を閉じていた従つて右集配人松川は受送達者に手交することができないので(当日は一般休日であるから上告代理人が同事務所を閉じていることは正当であり従つて上告代理人の責に帰すべき事由により送達が出来なかつたと言うものではない)当然翌五月六日に再度送達場所たる同ビル二階二十一号室に来り送達を為さなければならない義務がある然るに右集配人は再度訪れる煩労を避けんため偶々同ビルの管理人である灘尾に本件書類を手渡し右灘尾は漫然之を藤井正義名義で受領したもので翌五月六日上告代理人は右灘尾より本件書類を五月六日に到達したものとして受領した原告代理人は本件書類その他書留書類受領の権限を灘尾に委任したことは全くないし又灘尾はもとより原告代理人の事務員でも同居人でもない従つて灘尾の本件書類受領行為は全く無権代理行為であつて無効である斯かる無効の行為を表現した文書を唯一の証拠として為された原決定は違法なることは明かである而して原告代理人が本件書類を灘尾より受領したのは昭和参拾六年五月六日であるからその翌日より計算すると五拾日目は六月弐拾五日となるが同日は日曜日であるからその翌日たる六月弐拾六日を以て満了することとなる故に上告代理人が満了日たる六月弐拾六日に上告理由書を提出したのは正当であり民事訴訟法第参九九条第壱項第弐号に該当するものではない
仍て申立の趣旨通りの御裁判を求めるため本申立に及んだ次第である