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大阪高等裁判所 昭和36年(ラ)218号 決定 1962年2月06日

決  定

守口市本町一丁目三〇番地

抗告人

新原暎藤事

表英沢

右代理人弁護士

安藤伊重郎

大阪市城東区今福町九九〇番地の四二

相手方

山崎基秀

主文

本件競落許可決定を取消し本件競落を許さない。

抗告費用は相手方の負担とする。

理由

抗告人の抗告理由は別紙のとおりである。

本件強制競売の目的不動産について、抗告人が、昭和三二年二月一六日受付第二九六一号をもつて原因同年同月一五日代物弁済予約の所有権移転請求権保全仮登記を受け、同三六年一二月一六日受付第三五一二一号をもつて、原因昭和三三年八月六日代物弁済の所有権移転の本登記を受け、本件強制競売の申立が右仮登記後になされたことは、記録上明かである。

ところで、不動産物権変動の対抗力は、本登記の時から生じ、仮登記の時または物権変動の時まで遡及するものではないが、後に当該仮登記の本登記がなされると、不動産登記法第七条第二項により、その本登記の順位を決定する基準は仮登記の順位による。したがつて、代物弁済予約に基く所有権移転請求権保全の仮登記のある不動産に対しなされた強制競売手続は、後に右代物弁済予約完結に基く所有権移転の本登記がなされると、債務者の所有に属しない不動産に対する手続となり、その後適法に競売手続を続行することはできなくなる。

よつて、本件抗告は理由があるから、本件競落許可決定を取消し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり決定する。

昭和三七年二月六日

大阪高等裁判所第八民事部

裁判長裁判官 石 井 末 一

裁判官 小 西  勝

裁判官 岩 本 正 彦

抗告の理由

一、不動産競売期日の公告は民事訴訟法第六百五拾八条所定の要件を記載せざるべからざるに不拘本件競売期日の公告を見るに其要件たる賃貸借の期限並に借賃の記載なく現在実際賃借使用中のものは訴外浜田美徳占有中にして只だ登記簿上登記を為さざりしものにして而も事実上賃貸借の現存する場合に於ては登記の有無に不拘之を公告すべきものなることは民事訴訟法第六百五拾八条所定の賃貸借を掲げしむる所以の法意に徴し疑を容れざる所なれば公告中にも之れが記載を欠きたるは違法なり

二、本件競売不動産に付抗告人は其所有者たりし訴外山崎基秀に対し昭和三十二年二月十五日金八万円也を返済期日同年五月二十五日の約定にて貸与し同日抗告人は右債権確保の為本件不動産を不履行の場合には代物弁済として其所有権を移転すべき約定にて同年弐月十六日大阪法務局受附第二九六一号を以て代物弁済予約の仮登記を為したり

三、然るに訴外人山崎は前記返済期日に至るも借受金の返済を為さざるにより抗告人は不得止大阪地方裁判所へ代物弁済予約による所有権移転の本登記手続の請求訴訟を提起し同裁判所昭和三十三年(ワ)第三六〇〇号事件として繋属し抗告人勝訴の判決言渡され右判決は昭和三六年五月三十一日確定した此の間訴外人山崎は控訴並に上告の申立を為したるも何れも棄却せられたり

四、従つて本件不動産は昭和三十六年五月三十一日抗告人の所有権なること確定し直ちに移転の本登記を為すべきに不拘昭和三十五年三月不動産登記法の改正に依り後順位者の同意書なき為目下抗告人より同意を求むる訴訟中にして勿論勝訴判決あるものと確信致します又本件不動産競売の申立も勿論順位なれば抗告人に対抗することを得ず況んや本件の競落許可は昭和三十六年九月六日にして抗告人の所有権なることを確定したる後のことにして其違法なるものと信ず

抗告状追申書

一、本件競落不動産は昭和三十六年十二月十六日大阪法務局に於て大阪地方裁判所昭和三十三年(ワ)第三六〇〇号原告新原暎藤被告山崎基秀間の所有権移転の本登記手続請求事件の確定判決(附属書類添付)により本登記手続完了したり従つに抗告人は昭和三十二年二月十六日附所有権移転請求権保全仮登記に基き其所有権を取得したるものなれば其後昭和三十三年三月十五日強制競売手続開始決定に基く同三十六年九月為したる競落許可決定は抗告人に対抗することを得ざるは言を俟たざる処にして其違法不当となりたるものと信ず

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