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大阪高等裁判所 昭和37年(ラ)211号 決定 1962年12月25日

和歌山相互銀行

理由

原審記録によると、債権者株式会社和歌山相互銀行(以下債権者銀行という。)は、昭和三五年二月二七日抗告人保との間に同抗告人が債権者銀行に対し、現在のものを含めて将来相互掛金契約による給付、貸付、手形割引、債務保証、支払承諾及び当座貸越の方法により、元本の総額一〇〇〇万円を限度として金融を受けるべき旨約定し、かつ抗告人八重子との間に同抗告人は右約定に基づいて抗告人保が債権者銀行に対し現在及び将来負担する元本限度額一〇〇〇万円までの前示債務の担保のため、抗告人八重子所有の原決定添付「物件の表示」記載不動産に根抵当権を設定すべき旨契約し、同年三月二四日その旨の根抵当権設定登記が経由された。抗告人保は、同年一〇月一四日債権者銀行より一六二五万円を借り受けており、その支払のため、債権者銀行あてに金額一六二五万円、支払期日同年一二月一二日、支払場所債権者銀行船場支店と記載した約束手形一通を振り出し交付した。その後右貸金債務の弁済期は昭和三六年五月一一日に延期された。債権者銀行は、約定に基づき同年八月一八日前示与信契約を解除する旨の意思表示をし、同意思表示は翌一九日抗告人保に到達した。しかし、抗告人保はその貸金債務を弁済しないので、債権者銀行は昭和三七年四月一六日右抵当権の実行として本件競売の申立をしたことが認られる。

他方、証拠によると、抗告人保は債権者銀行に対し同年八月二〇日現在満期未到来の掛金債権、預金債権元本計一七五三万七〇〇〇円(高橋綾子名義の一〇万円を除く。)を有する反面、貸金債務元本二七九五万円を負担していることが認められる。

およそ債権者が債務者との間に債権極度額を定めて与信契約を結び、これに対し根抵当権が設定された場合、債権者が債務者に貸与した貸金債務は、特段の事情のない限り当該与信契約に基づくものであつて、それは当該根抵当権によつて担保されるものと解するのが相当である。前示認定によると、抗告人保は昭和三五年一〇月一四日当時債権者銀行に対し一六二五万円の貸金債務を負担しその支払のため手形を振り出したものであるから、右貸金債務は前示与信契約に基づくものであつて本件根抵当権によつて担保されているものというべきである。債権者銀行が前示極度額をこえて貸付をしたからといつて、それが与信契約に基づくものでないということはできない。ことに債権者銀行は前示のように抗告人保に対し前示掛金等返還債務を負担しているのであり、これに対して債権者銀行の方でその有する貸金債権と対当額につき、なし得べき相殺は、担保的機能を有するのであるから、債権者銀行が前示極度額をこえる金額の貸付をしたからといつて、不合理のものということはできず、これをもつて前示特段の事情にあたるものということはできない。抗告人等の主張は採用できない。

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