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大阪高等裁判所 昭和38年(う)11号 判決 1963年4月26日

控訴人 検察官

被告人 伊久男こと竹村幾秋 外二名

検察官 石岡敏夫

主文

原判決中被告人らに関する有罪部分を破棄する。

被告人竹村を懲役二年六月に、被告人大前、同釜田を各懲役一〇月及び罰金四〇、〇〇〇円に各処する。

被告人大前及び釜田において右各罰金を完納することができないときは、金五〇〇円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。

但し孰れも本裁判確定の日から四年間右各懲役刑の執行を猶予する。

右執行猶予の期間中孰れも保護観察に付する。

訴訟費用中原審証人滝春好、国選弁護人立入庄司、山田正一に支給した部分は被告人竹村の、国選弁護人中西義治に支給した部分は被告人大前の、国選弁護人服部恭敬に支給した部分は被告人釜田の各負担とする。

理由

本件各控訴の趣意は、検察官岡谷良文の提出にかかる検察官中藤幸太郎名義の控訴趣意書記載のとおりであり、これに対する答弁は被告人大前の弁護人中西義治の提出にかかる答弁書記載のとおりであるから、何れもこれらを引用する。

検察官の控訴趣意(法律の適用違背の主張)について、

よつて案ずるに、原判決は論旨摘録の如き事実を認定し、これに対し刑法第二三五条、第二五六条、第二五条、第二五条の二、等を適用の上、その主文において被告人竹村を懲役二年六月、被告人大前、同釜田を各懲役一〇月及び罰金四〇、〇〇〇円に各処し、孰れも懲役刑につき四年間刑の執行を猶予し、且つその猶予期間内において三年間それぞれ保護観察に付する旨の各言い渡しをなしたことは所論指摘のとおりである。

而して刑法第二五条の二所定の保護観察はその明文のとおり執行猶予の期間中付せられるものであつて、その執行猶予の期間中とは執行猶予の期間内とは異なり、執行猶予の全期間を意味するものであることは、その文理に照らし疑なきところである。刑法第二五条の二第一項前段の規定により付せられる保護観察は裁判所の自由裁量に委ねられているけれども、これは保護観察に付するかどうかの点にあり、いやしくも保護観察に付する以上、その期間は執行猶予の期間と同一でなければならない。もしそうでなく、保護観察が自由裁量により付せられるものであるから、その期間も執行猶予の期間内において自由裁量により決められるものとすれば、同条第一項後段の規定により付せられる必要的保護観察の期間とその意義を異にし到底是認し能わないところである。又もし付せられた保護観察が爾後の観察によりその必要を認めないときは同条第二項の規定により行政官庁の処分をもつて仮に解除することができるものであるから、この意味においても、猶予の期間中を猶予の期間内と同一に解する必要を認めないのである。然らば即ち、原判決はこれと異なる判断の下に前記の如き言い渡しをなしたことは法律の適用を誤つた違法が認められ、判決に影響を及ぼすことが極めて明らかであるから所論はその理由がある。

よつて刑事訴訟法第三九七条第三八〇条第四〇〇条但書の規定に従い次のとおり判決する。

原判決確定の事実に対し原判決挙示の各法律(刑法第一九条第二項第一項第二号及び刑事訴訟法第三四七条はこれを削り、刑事訴訟法第一八一条第一項本文は被告人大前釜田にも適用する)を適用の上、主文のとおりの各言い渡しをする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 児島謙二 裁判官 畠山成伸 裁判官 松浦秀寿)

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