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大阪高等裁判所 昭和38年(く)85号 決定 1963年12月17日

少年 A(昭二〇・一〇・二〇生)

主文

原決定を取消す。

本件を神戸家庭裁判所尼崎支部に差し戻す。

理由

本件抗告の理由は、附添人別城遺一提出の抗告趣意及び理由書、抗告理由補充書記載のとおりであるが、その要旨は、少年は保護観察中に本件非行を犯したものであるが、被害全額を弁償した。少年の非行前歴は一回だけであり、家族は反省し少年の指導育成に熱意を燃やしており、叔父新○信○が同少年を引取り職業を与え世話する旨申立てているので、原決定を取消されたいというのである。

調査するに本件保護事件記録並びに少年調査記録によれば、少年の学歴、生活歴、性格、非行歴、本件非行の動機、態様、非行後の行動などから観ると、少年の非行性は相当進行し固定化して来ており、保護者にも充分な監督を期待することができない状態に立ち到つていたので、少年に対しては少年院に収容し矯正教育する必要があつたものと一応考えられる。しかし本件記録及び当裁判所の事実調の結果によると、本件窃盗の被害は原裁判所において審判中に既に少年及び共犯者の保護者より被害者に弁償されていたことが明らかであり、被害者は寛大な処分を希望しており、また少年の叔父新○信○が少年を引取り、浦和市の自宅に同居させ、同人が池袋分室主任として勤務している東○電気株式会社に懇請して同会社に就職させ、直接指導監督し、その非行性を矯正させたい熱意を有している旨誓つており、その熱意もかなり強固なものが認められ、また親兄弟も少年の将来について希望を失つているものとは認められないので、少年の反社会的非行性の矯正の目的を達し得られることも期待できないことはないと思料されるから、この際少年院に収容しておくよりは保護者及び引受人の監護指導に委かせることも妥当な措置と思われる。

以上の見地から少年に対する原決定を取消し、原裁判所において更らに適当な保護処分をなすを相当と認め、少年法第三三条第二項により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 山田近之助 裁判官 石原武夫 裁判官 原田修)

参考二

抗告申立書

窃盗事件

少年 A

右事件に対し、神戸家庭裁判所尼崎支部が昭和三八年八月一七日審判言渡したる右少年を中等少年院に送致するとの決定は、不服に付き、抗告申立致します。尚抗告の趣旨及理由は別途附添人を通して理由書を提出致します。

昭和三八年八月二六日

西宮市○○○町○○○

少年実父 新○○<印>

大阪高等裁判所 御中

参考三

抗告趣旨及理由書

窃盗事件

少年 A

抗告申立の趣旨

一、右事件に対し、神戸家庭裁判所尼崎支部が昭和三八年八月一七日言渡したる、右少年を中等少年院に送致するとの決定は之を取消す。

二、右少年を一定の条件のもと相当期間試験観察に付する旨の御決定を求むる。

抗告の理由

一、本件少年は、保護観察中の犯行とは言え本件の被害全額を被害者の快諾のもとに弁償を完了して居ります。

二、前歴犯行は一回のみである。

三、少年の家族は挙げて、今回反省悔悟して、右少年育成に遺憾多かりし事を自覚して、其の後の指導育成に熱意を燃して居ります。

四、少年引取り居を換えて世話する人が現れて居ります。

五、緊急逮捕される際の状況並に金銭賍物支用消費の模様から純情尚掬すべきものを覚える。

昭和三八年八月二六日

右附添人 別城遺一<印>

大阪高等裁判所 御中

参考四

抗告理由補充書

窃盗事件

少年 A

右少年の身柄引受人に付左の通り上申致します。

住所 埼玉県浦和市○○△△△△番地(自宅)

氏名続柄 新○信○(六一歳)少年の伯父

職業 関東配電下請電気工事請負

環境を変え、職業安定を少年に与える為め、少年の実父の弟である新○信○氏が責任を以つて引取り少年を世話して呉れる事実上申して抗告理由を補充致します。証明書添付

昭和三八年九月二一日

右附添人弁護士 別城遺一<印>

大阪高等裁判所 御中

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