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大阪高等裁判所 昭和38年(ネ)1796号 判決 1966年2月14日

理由

被控訴人が自動車販売業者であることは、当事者間に争がなく《証拠》を総合すると、被控訴人の販売員訴外中幸夫の勧誘により、昭和三七年二月下旬頃被控訴人と訴外村田信夫との間に、被控訴人は右村田に対し被控訴人主張の本件貨物自動車一台を代金額、その支払方法は被控訴人主張の約定のとおりで売渡す旨の売買契約が締結され、村田は、同年三月二二日被控訴人に対し約定の頭金三〇万円を支払い、同日右自動車の引渡を受けたが、同月二五日頃これを自ら運転使用中被控訴人主張の衝突事故により、右自動車は大破し、同人は負傷し、同月二八日死亡するに至つたこと(もつとも、同人が右事故により、右の日死亡したことは当事者間に争がない。)が認められ、前記甲第一号証の記載内容中、右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。

そこで、被控訴人主張のように、控訴人らが右村田の前記売買契約上の債務につき、被控訴人に対し連帯保証をしたかどうかについて判断する。

《証拠》を総合すると、次の事実が認められる。

訴外村田信夫は、訴外関守の承諾を得て、同人名義で昭和三五年一〇月一〇日被控訴人から貨物自動車一台を代金は二〇数回の分割払の約定で買受け、控訴人らは、同日その連帯保証をしたことがあつた。控訴人らが右連帯保証を承諾するに至つたのは、右売買契約成立当時、被控訴人の指示により、右村田は、関守名義で右自動車につき保険会社と損害保険契約を締結し、自動車に大破等の損害が生じても、保険金が支払われるので、保証人らに迷惑がかからぬようになつていたからである。村田は、右自動車を自己の営業に使用していたところ、買受後十日程経た頃右自動車は事故により損傷を受けたが前記保険により保険金が支払われたので、控訴人らは、保証人として何らの出捐をしないですんだ。ところが、村田は、その後なお貨物自動車一台を被控訴人から買入れようと考え、被控訴人の販売員中幸夫を通じ被控訴人に対しその注文をしたところ、保証人が必要だというので、控訴人丹生に保証人になつてくれるよう依頼した。同控訴人は、関守名義で買受けた前回と同様、村田において、買受け自動車につき損害保険に加入するならば、その加入後に保証しようと返答した。そこで、村田は、ひとまず、同年二月二四日自己を注文者とし、保証人を控訴人丹生と記入した自己作成名義の貨物自動車注文書一通(甲第一号証)を作成し、これを被控訴人に対し前記中幸夫を通じて差入れ、かつ、同控訴人が無条件で直ちに連帯保証を承諾した旨虚偽の事実を告知した。しかし、被控訴人は村田に対し、なお一名の保証人を要求したので、村田は、控訴人丹生を通じ前回同様控訴人小林に対し保証人になつてくれるよう依頼した。控訴人小林は、控訴人丹生を通じ村田に対し、前回同様村田において買受ける自動車につき損害保険に加入するならば、その加入後に保証しようと答えた。しかし、村田は、中幸夫を通じ被控訴人に対し、控訴人小林が無条件で直ちに連帯保証を承諾した旨虚偽の事実を告知した。そこで、これを信じた被控訴人は、村田に対し売買及び連帯保証に関する契約証書作成のため、村田及び控訴人らの各印鑑証明書を提出するよう催促したので、村田は、控訴人らに対し被控訴人との間の自動車売買の話合の過程において、控訴人らの各印鑑証明書を被控訴人に呈示する必要があるので、右各印鑑証明書を交付してもらいたいと要求した。控訴人らは、村田が損害保険に加入後、売買契約証書に保証人として署名捺印した後にはじめて保証人としての責任が生ずるものであると信じていたので、村田の右要求に応じて自己の印鑑証明書を同人に預けても、その使途が同人のいうとおりであれば問題はないと考え、同年三月上旬頃自己の各印鑑証明書(甲第二号証の三、四)を控訴人小林の雇人である控訴人丹生の娘に預けていたところ、村田の指示により中幸夫がこれを右娘から受取つた。一方被控訴人は控訴人らにおいて、前記のように、村田が関守名義で買受けた際も連帯保証したことがあつたので、村田のいうとおり、今回も控訴人らにおいて連帯保証を承諾したものと信じ、従つて、当初から本件自動車が事故で大破するまでの間、控訴人らに対し連帯保証してくれるよう交渉したことは全くなく、また、果して村田のいうように連帯保証を承諾したかどうかを確かめたこともなく、村田の再三の要求により前記のように、同月二二日頭金の支払と引換えに本件自動車を同人に対し引渡した。元来被控訴会社では自動車販売の場合、買主及び連帯保証人らの署名(又は記名)、捺印のなされた自動車売買契約書(甲第二号証の一のような形式のもの)を作成後、約定の頭金の支払と引換えに買主に対し自動車を引渡すのを通例としていたのに、本件自動車については、村田からの前記引渡要求当時担当販売員中幸夫が不在であつた等の原因から軽卒にも右売買契約書の作成前に右自動車を引渡してしまつた。そして、右引渡の日の翌二三日に被控訴人は、村田及び控訴人らの捺印を得るべく、同日付の本件自動車売買契約証書一通(甲第二号証の一)を作成した(これに前記控訴人らの各印鑑証明書(甲第二号証の三、四)を貼付)が、その後村田は死亡し、控訴人らは捺印を拒否したので、同人らの捺印は得られなかつた。

以上の事実が認められ、以上の認定に反する原審証人中幸夫、同坪井茂一、同吉野茂の各証言の一部は、その認定に供した前記各証拠に比照して信用することができず、他に以上の認定を左右するに足る証拠はない。

以上認定の事実関係によると、被控訴人と控訴人らとの間に、被控訴人主張の連帯保証契約が締結されたということはできないから、その締結を前提とする被控訴人の控訴人らに対する本訴請求は、いずれもその余の点につき判断するまでもなく失当であることが明かである。

そうすると、本訴請求を認容した原判決は不当であり、本件控訴はいずれも理由がある。

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