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大阪高等裁判所 昭和39年(く)41号 決定 1964年5月22日

少年 I(昭二〇・八・三〇生)

K(昭二一・一・一五生)

G(昭二〇・一二・一四生)

R(昭二〇・五・一〇生)

主文

本件各抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣旨は、記録にある附添人弁護士河原正作成名義の抗告申立書記載のとおりであるから、これを引用する。論旨は、本件非行の主謀者はAであつて、少年等は同人に附和随行したものであること、少年等には非行歴なく、少年等の両親より被害者に慰藉料として金一〇万円を支払つて陳謝し、被害者も少年等を宥恕し寛大な処分を望んでいること、少年等の両親は健在で、将来への保護監督も充分期待できる等の事情があるのに、少年等を同種非行歴のある原審少年Bと同じく中等少年院に送致する旨の保護処分決定を言渡したのは、著しく不当であるから原決定の取消を求めるというのである。

よつて、当裁判所は、所論にかんがみ記録を精査し、次のとおり判断する。

本件非行は、少年Iが過去に交際のあつた被害者○藤○美子を夜間連れ出し、原審少年Aと共に同人の運転する自動車に無理に乗せて人家のない山中の○○神社に連行し、Aが○○市のパチンコ店で待期しているIの仲間の少年K、G、Rならびに原審少年Bを呼びに行つている間に同女を同神社社務所に連れ込み嫌がる同女の反抗を抑圧して強いて姦淫し、その直後同所にやつて来たK、B、G、R、Aの五名もIが同女と関係したことを聞いて劣情を催し共謀の上原決定が示しているように右の順序で嫌がる同女を強姦した事案であつて、その契機はIの言動によるものでありまたAがK等を連れて来たのはIが同夜K等の要求をいれ俺の女に合わせてやると約束していたからであることが認められるから、Aが独自の判断でIと○子を前記神社まで運び、次いで他の少年等を同所に連れて行つたとしても、このことだけで、その主謀者がAであつて少年等が同人に附和随行したものであるとは到底考えられず、その犯情においてAとさ程区別すべき筋合のものではない。そして被害者は、これまでに性交の経験があつたとはいえ、二一歳の未婚の女性に対し、かかる強姦行為を何等躊躇することなく敢行したことは、少年によるこの種犯行の頻発する現在、まことに憂慮すべきことがらであるから少年等の要保護性を軽視することはできない。少年等の少年調査記録によれば少年等の非行歴は、Kが無免許運転一回、G、Rに傷害がそれぞれ一回(不開始)あるだけであるが、少年等はいずれも中流家庭に育ちながら甘やかされて養育され、意思薄弱にして怠惰、享楽的傾向を有し、中学校、高等学校を通じ、いずれも問題少年とみられ、学業を懶けて高校を中退し(Rはその後○○高等学校に入学)、生活態度も放縦で夜遊び、不良交友を続け、K、G、Rは性病(淋病)にかかつたこともあること、少年等の両親は、Iの母親が結核で入院中であるほか健在であり、いずれも在宅保護を希望しているけれども、少年等の不良化は現在に始まつたわけではなく、すでに高等学校在学中より急速に悪化していたのに拘らず適当な矯正手段をとることなく放任されていたことが認められるから、いま直ちに少年等を家庭に帰えしたところで充分な監護教育を期待することはできず、一層非行性を助長させるおそれが濃厚である。なお少年Kについては自衛隊の試験に合格していることが認められるが、同少年の資質、性格から見て、同所での矯正に必ずしも期待し得べきものがあるとは断定し難いから、このことのために他の少年とその処遇を異にするわけにはいかない。

されば、この際少年等を保護施設に収容し規律のある生活環境のもとで適切な矯正保護を受けさせその更生を図るのが少年等の健全な育成を期するためもつとも適切な方法であると考える。そして所論のごとく被害者に慰藉料を支払つていることを少年等の要保護性との関連において充分考慮しても前示結論を左右することができず、また原審少年Bに本件と同種の非行歴があるとはいえ、それは同人の中学生当時のことであつて、本件においては同人が最年少者であること等から考え、本件少年等をBと同一の処分をしても著しく権衡を失した不当のものとは考えられない。従つて少年等を中等少年院に送致することとした原決定の処分は相当であつて、本件抗告は理由がない。

よつて少年法第三三条第一項により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 笠松義資 裁判官 河村澄夫 裁判官 荒石利雄)

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