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大阪高等裁判所 昭和39年(ネ)277号 判決 1966年3月29日

理由

当裁判所が被控訴人の本訴請求を正当として認容すべきものとする理由は、次のものを加えるほか、原判決理由記載と同一であるから、これを引用する。

手形表面部分の成立について争がなく、裏面部分は原審における被控訴人本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一号証同尋問の結果によると、1の手形は被控訴人が昭和三三年一〇月三一日中野勝己から裏書譲渡を受けた事実を認めることができる。

2の手形は被控訴人が中野勝己から昭和三三年一〇月六日白地式裏書により譲渡を受け、これを株式会社太道相互銀行に交付して譲渡したものであつて、中野が直接同銀行に裏書譲渡したものでないことは、原判決の認定するとおりである。

控訴人は、被控訴人が1、2の手形を取得した当時、右各手形は中野が控訴人に納入すべき木材の前渡金として控訴人から受取りながら木材を納入しないことを被控訴人は知つていたと主張するけれども、当審証人中野勝己、片岡良造の証言中右同旨の部分は、原審における被控訴人本人尋問の結果と比べ合わせると信用することができず、他にこれを確認するに足りる証拠はない。

もつとも、手形表面部分の成立について争がなく、原審における被控訴人本人尋問の結果によつて裏面部分が真正に成立したものと認められる甲第二号証、同本人尋問の結果によると、被控訴人は2の手形を支払拒絶証書作成期間経過後である昭和三五年五月二六日株式会社太道相互銀行から裏書を受けたものであり、その当時は中野が控訴人に納入すべき木材の前渡金として2の手形を控訴人から受取りながら木材を納入しなかつたことを被控訴人は聞知していた事実を認めることができるけれども、前示のとおり被控訴人が昭和三三年一〇月六日2の手形の裏書譲渡を受けたとき悪意であることをもつて被控訴人に対抗することはできないものといわなければならない(最高裁判所昭和三四年(オ)第七〇五号、昭和三七年九月七日第二小法廷判決民集一六巻九号一八七〇頁参照)。たとえ控訴人主張のとおり2の手形は中野が株式会社太道相互銀行に裏書譲渡し被控訴人が期限後裏書を受けたものであつたとしても、同銀行が悪意で取得したことの主張立証がない限り、期限後被裏書人である被控訴人に対し悪意の抗弁をもつて対抗することのできないことは同様である。

そうすると、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。

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