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大阪高等裁判所 昭和39年(ラ)233号 決定 1964年12月18日

抗告人

賀集益弥

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告の負担とする。

理由

一、本件抗告の趣旨ならびに理由は別紙記載のとおりである。

二、当裁判所の判断。

(一)  一件記録によれば、次の事実を認めることができる。すなわち、

(1)  抗告人は亡賀集和三郎の長男であるところ、和三郎は昭和三三年一一月三〇日抗告人肩書住所で死亡した。

(2)  和三郎の相続人は、抗告人のほか、その妻である賀集とよ、その二女である賀集雪子、およびその三女である庄野欣子の四名であるが、現在、とよおよび雪子は大阪市西淀川区柏里町一丁目五三番地に、また、欣子は鳴門市撫養町林崎字南殿町三六番地にそれぞれ居住している。

(3)  抗告人は、とよ、雪子、および欣子を相手方として原裁判所に対し、昭和三九年七月三一日本件遺産分割調停の申立てをしたところ、原裁判所は同年八月二九日家事審判規則四条一項によりこれをとよ及び雪子の住所地を管轄する大阪家庭裁判所に移送する旨の審判(原審判)をした。

(二)  <中省>なお、抗告人は、本件は、抗告人と前記相手方三名間に、前記和三郎の遺産についてさきに昭和三八年五月二四日成立した遺産分割の調停(原裁判所同年(家イ)第二〇号事件)に記載もれの残余の分に関するもので、その大部分が兵庫県三原郡南淡町に存在するのであるから、当然原裁判所において調停手続を進めるべきものであるのにかかわらず、原裁判所が右実情を無視し、本件を大阪家庭裁判所に移送したのは不当である旨主張する。なるほど、同規則四条一項但書によれば、管轄権のない家庭裁判所は事件処理のため特に必要があると認めるときはみずから処理することができる旨定められているけれども、右自庁処理について即時抗告を認める明文の規定もないことに鑑みると、右必要性の有無の判断は、当該家庭裁判所の専権に属し、自庁処理は勿論自庁処理をしないことについても不服申立を許さない趣旨であるというべく、したがつて、事件の申立てを受けた管轄権のない家庭裁判所が、自庁処理の必要性がないとして右規則四条一項本文に則り、管轄家庭裁判所に事件を移送する旨の審判をした場合、当事者が、自庁処理の必要性のあることを理由としてなす即時抗告の申立は、それ自体理由がないと解するのが相当である。そうであるから、本件の場合、かりに抗告人主張のような事情があるとしても、これをもつて原審判に対する不服申立の事由となし得ないことは上記の通りであるから、抗告人の右主張も採用できない(もつとも、移送の審判があつても、それが管轄違いを理由とするものである場合、移送を受けた家庭裁判所は、右と別個の理由、即ち事件の処理上適当であるとの理由により、他の家庭裁判所にさらに移送することができるものと解すべきであるから、抗告人主張のような事情があれば、本件の移送を受けた大阪家庭裁判所においてこれを考慮し、将来本件を原裁判所に再移送することもあり得ようが、このことは、もとより本件と別個の問題であり、それあるが故に抗告人の主張を正当とすることができないのはいうまでもない。)

(三)  よつて、主文のとおり決定する。(裁判長裁判官金田宇佐夫 裁判官日高敏夫 古崎慶長)

抗告の趣旨

原決定はこれを取消し本件を神戸家庭裁判所洲本支部に差し戻すとの裁判を求める。

抗告の原因

一、抗告人が昭和三九年七月三一日に神戸家庭裁判所洲本支部へ申立てた遺産分割調停について昭和三九年九月一日神戸家庭裁判所洲本支部がした昭和三九年(家イ)第二四号移送決定の審判を同年九月二日に知つた。

二、右神戸家庭裁判所洲本支部の移送決定の理由は「家事審判規則第四条第一項によつて」とあるが

(イ) 本件の当事者の住所は兵庫県三原郡南淡町一人、大阪市二人、徳島県鳴門市一人となつているが大阪市二人のうち一人は住民登録地が大阪であつて実際住所は兵庫県尼崎市である。

(ロ) 抗告人のした本件の遺産分割調停申立に記した遺産目録のうちの遺産の大部分を占める不動産は兵庫県三原郡南淡町に存在する。

(ハ) 本件の遺産分割調停申立に記した被相続人の住所ならびに相続開始地は共に兵庫県三原郡南淡町賀集福井五五五である。

故に家事審判規則第九九条ならびに民事訴訟法第一九条によつて神戸家庭裁判所洲本支部が本件の管轄裁判所であり家事審判規則第四条第一項のうちの「但し事件を処理するため特に必要があると認めるときはこれを他の家庭裁判所に移送し」に相当する実情が存在しないので抗告人は不服である。

三、昭和三四年六月二二日に神戸家庭裁判所がうけつけた昭和三五年(家)第七七号遺産分割事件申立人賀集トヨ外二名相手方賀集益弥を本件とくらべてみると当事者は申立人と相手方と入交替しているだけで同一人であり、その住民登録地、実際住所も同一被相続人の姓名住所、相続開始地も同一、遺産目録記載の遺産も略同性質であつて同支部において昭和三八年五月二四日に昭和三八年(家イ)第二〇号遺産分割事件として調停が成立したが本件は同支部がうけつけ大阪家庭裁判所に移送決定の審判をしたしかるに本件は前記のとおりの実情であり且つ昭和三八年(家イ)第二〇号遺産分割事件の調停成立後発見された前記調停事件調停調書に記載なき未分割の残遺産であるから当然前記調停事件の続きとして同支部において調停されるべきものであるので抗告人は本件の移送決定に対し不服である。

それで本件を大阪家庭裁判所に移送するとの移送決定を取消し本件を神戸家庭裁判所洲本支部に差し戻しを求めるためこの抗告をする次第である。

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