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大阪高等裁判所 昭和39年(行コ)12号 判決 1965年3月29日

控訴人 若江明

被控訴人 国

国代理人 堀川嘉夫

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事  実 <省略>

理由

控訴人は原判決を取り消し、本件を大阪地方裁判所に差し戻すことを求めているから、この点を考察する。本件記録によると、次の事実が認められる。すなわち、原告(控訴人)代理人は昭和三八年二月二八目午後一時の原審口頭弁論期日に出頭し、請求の趣旨を更正する旨記載した同日附準備書面を陳述し、被告代理人が弁論の終結を求めたのに対し、原告代理人は続行を求めたところ裁判長は合議のうえ弁論終結を宣したので、原告代理人は裁判長の訴訟指揮に対し異議を申し立て、次いで列席三裁判官に対し忌避の申立をした。ところが、原審裁判所は昭和三八年一二月二四日本件忌避の申立は、訴訟遅延を目的とし、忌避権を濫用した不適法なものであり、このような場合にはその申立をされた当該裁判官が忌避についての裁判に関与することができるものとして、忌避申立を却下する旨の決定をし右決定は昭和三九年一月一八日原告代理人に送達されたので、原告代理人は同月二二日当裁判所に即時抗告の申立をした。一方、原審裁判所の裁判長は判決言渡期日を昭和三九年一月三一日午後一時と指定し、その呼出状は同月一八日原告代理人に送達されたので、原告代理人は同月二一日前同三裁判官に対し、さらに、前示忌避申立却下決定は無効であるのに、判決言渡期日を決定し呼出をすることは無効であるとして、忌避の申立をしたところ、原審裁判所は同月二七目本件忌避の申立は忌避権を濫用した不適法なもので、その申立をされた当該裁判官が関与できるものとして、これを却下する旨の決定をし、右決定は同年二月一日原告代理人に送達されたので、原告代理人は同月六日当裁判所に即時抗告の申立をした。当裁判所は前の抗告については同月一九日、後の抗告については同月二六日、いずれもこれを棄却する旨の決定をし、両決定とも同年三月七日原告代理人に送達された。原審裁判所は指定した同年一月三一日午後一時の期日に判決の言渡をしたものである。

このように、忌避の申立が忌避権を濫用した不適法なものであるときは、その申立をされた当該裁判官が忌避についての裁判に関与することができるものと解するのが相当であるから、原審裁判所が本件忌避の申立は忌避権を濫用した不適法なものとして却下したことをもつて違法ということはできない。原審裁判所が判決の言渡をした昭和三九年一月三一日当時は、前の忌避申立却下決定は、すでに昭和三八年一二月二四日にされ、昭和三九年一月一八日原告代理人に送達され、原告代理人は当裁判所に即時抗告の申立をし、未だ抗告棄却の決定がされておらず、後の忌避申立却下決定は、同月二七日にされたが、未だ原告代理人に送達されておらなかつた。しかしながら、訴訟遅延を目的とし忌避権を濫用する者に対してまでも、正当な権利の行使をする者と同じような保護を与える必要はないから、忌避権を濫用した忌避の申立については、民訴法第四二条の適用は排除され、忌避申立却下決定が告知されその効力を生じた場合には、却下決定の確定前であつても訴訟手続を停止することを要しないものである。同一裁判官に対し前示のような理由でさらに忌避の申立がされたときには、忌避申立却下決定がされ裁判所によつて忌避権を濫用するものであることが明白にされた以上、訴訟がさらに遅延することを防止するため、告知による効力の生ずる前であつても、訴訟手続を停止することを要しないものである。

以上のとおりであるから、忌避申立却下決定に対する当該判所の抗告棄却の決定がある前に、原審裁判所が判決言渡をしたことを違法とする控訴人の主張は失当である。

控訴人の本件訴のうち所有権確認請求を除く部分をすべて却下すべきものとし、所有権確認の請求を棄却すべきものとする理由は、全部原判決理由記載と同一であるから、これを引用する。そうすると、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、民訴法第九五条第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 熊野啓五郎 斎藤平伍 兼子徹夫)

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