大判例

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大阪高等裁判所 昭和40年(う)2159号 判決

判決理由〔抄録〕

よって所論にかんがみ記録を精査し、当審における事実の取調の結果をも参酌して案ずるに、原判示事実は、その挙示する証拠によって優に肯認することができる。すなわち本件事故は、被告人が信号機の設備のない踏切の直前で一時停止せず、かつ左側(西側)の交通の安全を確認せずして通過せんとしたために発生したことは明らかである。そして司法巡査作成の各実況見分調書及び当裁判所の検証調書によると、所論の如く本件踏切は、南側より北側に通過する自動車にとって、西側線路の見通しの極めて悪いことは認められるけれども、道路交通法第三三条に規定している自動車運転者が、信号機の設備のない踏切を通過しようとするときは、踏切の直前で一時停止し、交通の安全を確認した後でなければ進行してはならないとの業務上の注意義務は、如何なる場合でも自動車の運転者が踏切の直前で一時停止し、自動車内より見られる範囲内の所を見て、その安全を確めただけで、その注意義務を尽したといい得るものでないことは、あえて多言を要しないところである。すなわち、当該踏切の状況により、踏切の直前においてもなお見通しが困難であって、車内からだけでは安全を確認し難いところであれば、左右から進行して来る電車の有無を確かめ、交通の安全を確認するため、自ら下車し、あるいは他の者を下車させて、確認可能の場所まで進出又は進出させる等の方法によって安全を確認し、時にはその者の誘導により、あるいは、自ら電車の警笛等に耳を傾けて、電車が接近していないことを確める等交通の安全を確認したうえで進行すべきものである。ところで、本件踏切は車内からだけでは安全を確認できないのに被告人が本件踏切において右のような措置を採っていないことは明かであり、もし右の措置に出ておりさえすれば下り電車の接近に気付き得てこれとの衝突を避けることができたものと考えられる。現に本件の場合原判決挙示の村上幸司の司法巡査に対する供述調書、原審第二回公判調書中の証人山田昇の供述を総合すると、被告人の自動車と衝突した下り急行電車が本件踏切に向う途中踏切の相当手前にあたるカーブで、被告人の自動車が未だ踏切に進入しない以前において連続的に警笛を吹鳴したことが認められ、かつ当裁判所の検証調書によると、同踏切に向う下り電車が同踏切から相当西方にあるカーブの所から連続して警笛を吹鳴しており、該警笛は、同踏切南側手前においてこれに注意を払っておれば、優に聞こえることができるのであるから、もし被告人において前記の注意を払ってさえおれば、警笛によっても電車の接近を知り得た筈である。してみれば被告人が同警笛を看過したことも、本件踏切通過の際の安全を確認する義務を怠ったものといわねばならない。

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