大阪高等裁判所 昭和40年(ラ)32号 決定 1965年4月08日
抗告人 高井栄男(仮名)
被抗告人 二宮房子(仮名) 外五名
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。
当裁判所は、原審判を正当とするものであつて、その理由は、次のとおり附加する外、原審判の理由に記載するところと同一であるから、これを引用する。
原審は、本件審判申立に関し、横浜家庭裁判所に、抗告人高井栄男、被抗告人川村圭子、同高井典子の三名につき本件遺産分割に関する包括的調査を嘱託し、同裁判所は、家庭裁判所調査官をして、右三名につき、右包括的調査をなさしめ、右調査官は右三名に面接して本件遺産分割につき包括的調査を実施し、その際右三名は本件遺産分割申立につき、各自相当の陳述をしてその主張を明らかにしていることが一件記録上認められる。
家事審判手続では、事件ごとにその種類や具体的状況に応じた審理方法がとられるのであつて、関係人が法定の手続で審尋を受ける権利を保障されているわけでなく、また、法律上一定の方式による事実審理が必要なものではないのであるから、本件で原審が抗告人を呼出し、抗告人が病気中であるとして医師の診断書を添付して出頭できない旨回答し、欠席したのに対し、再度呼出しをしなかつたとしても、直ちにこれを違法とすることはできないのみでなく、抗告人は、前記調査の際、被抗告人房子の本件遺産分割の申立及びその主張を知らされ、これに対し相当の陳述、主張をしていることが記録上明らかであつて、本件につき、原審のとつた審理方法は相当であり、これに審理不尽の違法はない。
一件記録によれば、原審判添付目録記載の宅地は、原審の認めるとおり、相続開始の際、被相続人高井吉松の所有に属していたことを、認めることができるのであつて、原審がこのように認定したことに違法の点はなく、抗告人が昭和二四年七月頃高井吉松から右宅地の贈与を受けたことを認めて右認定を覆えすに足る証拠はない。
よつて、抗告人の主張はすべて理由がなく、原審判は正当で、本件抗告はその理由がないから、これを棄却することにし、主文のとおり決定する。
(裁判長判事 岩口守夫 判事 岡部重信 判事 安井章)
抗告理由 省略