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大阪高等裁判所 昭和41年(う)2070号 判決 1967年2月28日

主文

原判決を破棄する。

本件を神戸簡易裁判所に差し戻す。

理由

本件控訴の趣意は、被告人作成の控訴趣意書に記載のとおりであるからこれを引用する。

職権により判断するに、本件記録によれば、原判決中証拠の標目欄記載の司法巡査作成現認報告書は、原審第一回公判期日に取り調べられたものであることが認められるところ、同期日の公判調書の別紙証拠関係カード中右書面(単に違反現認報告書と記載されている)の項の同意、不同意の別欄には、何らの記載がなく、また他に同書面を取り調べるについての被告人の同意の存在を認めるにたりる形跡も存しない。そこで右現認報告書の内容について検討するに、同書面には、(一)その作成者である司法巡査尾形善男の意見書ないし報告書の性格を有する部分(二)刑事訴訟法三二一条一項三号に該当する同巡査の供述書としての性格を有する部分及び(三)同条三項の検証調書に準ずる同巡査の実況見分調書の性格を有する部分の三者を包含していることが認められ、従って右(一)の部分についてはもちろん(二)、(三)の部分についても、それぞれ右各項所定の要件をみたさない以上刑事訴訟法三二六条の被告人の同意がなければ、書面としての証拠能力を有しないことは明らかである。ところで右第一回公判調書の別紙証拠関係カード中証拠の標目および立証趣旨欄には冒頭に検察官とあり、つづいて法三二一条三項書面と肩書の上右司法巡査作成現認報告書の表示がなされているところから判断すると、検察官は、右書面中同項書面としての性格を有する部分を証拠とする趣旨でその取調請求をしたものと推測されるから、これを証拠とするためには、前記のとおり被告人の同意の存しない本件においては、同項により、右書面の作成者である前記尾形巡査が、公判期日において証人として同書面が真正に作成されたものであることを供述することを必要とすることが明らかであるが、記録を精査しても、右証人尋問のなされた形跡はないから右司法巡査作成現認報告書は証拠能力を欠くものというべきである。そして、原判決の証拠の標目欄の記載によれば、同書面は被告人の原審公判廷における供述及び同人の司法警察職員に対する供述調書(原判決に供述書とあるのは誤記と認められる)以外の唯一のものであることが認められるから、結局原判決は、証拠能力を有しないものをもって補強証拠とし、その結果被告人の自白のみによって原判示犯罪事実を認定したことに帰し、刑事訴訟法三一九条二、三項に違反する。そして右の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから控訴趣意についての判断をするまでもなく原判決は破棄を免れない。

よって刑事訴訟法三九七条一項、三七九条により原判決を破棄し、同法四〇〇条本文により本件を神戸簡易裁判所に差し戻すべきものとし主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山崎薫 裁判官 浅野芳朗 大政正一)

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