大阪高等裁判所 昭和41年(う)293号 判決
主文
原判決を破棄する。
本件を木津簡易裁判所に差し戻す。
【判決理由】<前略>(二) 記録を調査すると、奈良地方法務局登記官作成の昭和四〇年八月九日附閉鎖登記簿謄本及び同年六月二三日附登記簿謄本によれば、被告会社はもと六進建設株式会社と称していたが、本件公訴提起後である昭和三九年一二月三〇日その商号を大進和建設株式会社と変更すると共にそれまでの代表取締役岡田義輝、同被告人本吉栄吉が辞任し、新たに代表取締役和家佐智が就任し、その旨の登記を昭和四〇年一月一三日にしたが、更に同年六月一四日同人が代表取締役を辞任し新たに荒木武男が代表取締役に就任したことが認められる。ところで原審は昭和三九年五月二〇日の第一回、同年六月一〇日の第二回、各公判期日には被告会社の当時の代表者岡田義輝及び被告人本吉栄吉に対し適法に召喚して各公判期日を開いたが、その後被告会社代表者の選任した弁護人山中幸夫が死亡したところ、被告会社について昭和四〇年六月一七日当時被告会社の代表者でない岡田義輝と被告人本告栄吉が共同して弁護人池田良之助と連署した弁護人選任届を原裁判所に提出して受理され、原裁判所は本件について同月二一日当時追って指定することとしていた次回公判期日を同年七月二六日午前一〇時と指定し、被告会社について代表取締役を右期日に召喚するに際し岡田義輝に召喚状を送達し、被告人本吉栄吉その他の被告人にも召喚状を送達し、右期日の第三回公判において被告人本吉栄吉が被告会社の代表者として、弁護人池田良之助が被告会社の弁護人として出頭したものとして開廷し検察官申請の証人丸山二三一、同門根彪の取調を終え、弁護人申請の証人松本正雄、同秋山治の採用決定をし訴訟関係人に次回期日を告知し、同年九月六日の第四回公判期日には被告会社の代表者として岡田義輝及び被告人本吉栄吉、その弁護人として池田良之助が出頭したこととして開廷し証人松本正雄、同秋山治の取調を終え、訴訟関係人に次回期日を告知し、同年一〇月六日の第五回公判期日及び同年一〇月六日の第六回公判期日においては被告会社の代表者及び弁護人としていずれも第四回公判同様の者が出頭したものとして公判を開いたが、第五回公判においては岡田義輝から被告会社の商号が変更になり現在の代表者は荒木武男である旨陳述があったので次回期日を告知して期日を続行し、第六回公判において検察官から被告会社の名称並びに代表者の氏名、住居の変更について申立があり、改めて被告会社の代表者荒木武男に次回公判期日である同年一二月一日に出頭すべき旨の召唆状を送達し、同日附で被告会社について右代表者と弁護人池田良之助とが連署した弁護届を原裁判所に差出し受理され、同日の第七回公判において右代表者及び弁護人が出頭のうえ開廷し被告会社に対し代表者について人定尋問をし、検察官申請の前記閉鎖登記簿及び登記簿各謄本の証拠調をするとともに職権で第三回公判調書中の証人丸山二三一、同門根彪の尋問調書並びに第四回公判調書中の証人松本正雄、同秋山治の尋問調書の取調をし、更に検察官申請の他の被告人らの身上調査照会書、前科調書並びに被告人三名及び岡田義輝の捜査機関に対する各供述調書の取調を終えて結審したことが認められる。前記の如く被告会社については昭和四〇年六月一七日の弁護届は代表者でない被告人本吉栄吉及び岡田義輝が選任したもので無効であり、法人である被告会社については代表者が公判期日に出頭する義務はないが、その権利はあるから公判期日について代表者に適法に召喚がなされなかったこととなる原審第三回より第六回までの各公判期日の手続は被告会社に関する限りにおいては無効と解せられる。従って、原裁判所は右の如く無効の手続において施行せられた前記各証人に対する証言ないしこれを記載した尋問調書が証拠とすることができないものであることが判明した以上、刑事訴訟規則二〇七条に則り排除決定をすべきであるのに、その挙に出ないで第七回公判において証拠能力のない右各証人尋問調書につき職権で更に取調べたのは二重の違法を侵したものといわなければならない。(右各証人尋問調書は被告会社については他の事件の公判におけるものと同じであって、当該事件についての公判準備における証言の如く、刑事訴訟法三二一条二項前段によって無条件に証拠能力を取得するものではなく刑事訴訟法三二一条一項一号の要件を充たすか、同法三二六条の同意があって始めて証拠能力を取得するものと解する。)
そして原判決はその挙示の証拠に右認定の如く証拠能力のない証人丸山二三一、同松本正雄、同秋山治の供述記載部分(原判決の証拠標目欄に各当公廷における供述とあるのは被告会社については供述記載とすべきである。原判決はそのほか被告人山本については、証人丸山二三一、被告人松本については証人松本正雄同秋山治に関してそれぞれ供述記載とすべきを当公廷における供述としているがいずれも証拠の標目の記載の誤りに過ぎないものとみてこのことだけでは判決破棄の理由とはならないものと解する。)を引用して罪証に供しているから、原判決には訴訟手続の法令違背があり、この違背は被告会社の原判示第一の一、二の事実(原判決は右証拠を全事実について引用しているが、原判示第一の三の事実には直接関係がない)につき判決に影響を及ぼすことが明らかであり、原判決はこの点においても破棄を免れない。そして原判決は被告会社について右原判示第一の一、二の各罪と原判示第一の三の罪とを併合罪の関係にあるものとして一個の刑を言渡しているから、被告会社に関する原判決はその全部において破棄を免れない。(畠山成伸 柳田俊雄 八木直道)